漫画家はADHDが多い

【沖田】漫画家はADHDめっちゃ多いです。

【岩波】水木しげるさんとさくらももこさんは、確実にそうですね。水木さんは子供時代にボーッとしてたから知恵遅れと思われて、小学校の入学が1年遅れたそうです。

【沖田】戦争行ってよく死にませんでしたね。

【岩波】爆弾がいっぱい落ちてくるのを「キレイだなー」と見てたり。ニューカレドニアの現地に溶け込んでしまって、「嫁をやるからここでずっと暮らせ」って言われたそうです。

さくらももこさんは沖田さんと似ているところがあり、「授業中、いつも私は白昼夢の中に生きていた」とエッセイに書いています。

【沖田】ももこさんの漫画、背景に規則性があって、きっちりされてるんです。色とか独特ですよね。海外の人みたいな感じ。

部屋で勉強している若い女性
写真=iStock.com/metamorworks
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発達障害の人こそ大学進学を

【沖田】でもやっぱり、発達障害だから天才ってわけじゃないです。

発達障害の子どもの親が心配するのは、その子が社会にちゃんと出られるのかということです。芸術方面に行かせたいと親が思っても、子どもがそれを望んでないとしたら地獄になる。子どもの夢ってけっこう実現しないことが多いから、目標はとりあえず大学にしておくのがいいんじゃないかな。大学を出たらそこそこの就職ができると思うから。

【岩波】特に発達障害の人は、経済的に可能であれば大学に行ったほうがいいと思います。

社会に出る前の猶予期間ができて、自分なりに勉強したり、アルバイトして「こんなミスをしやすい」と知っておいたりすることは重要だと思います。高校生だと忙しいし、社会に出る練習というのは、なかなか実感できないでしょう。

【沖田】私は大学に行かなかったから、うらやましいです。

【岩波】外来などで、進路について相談されたら、「可能なら大学に行ってください」と言っています。そうすると高校生のとき薬を飲んでいた人が、やめることもできるケースもありました。大学はゆるいですから。

【沖田】そうそう、そのゆるさが欲しい。

【岩波】高校を出てすぐ実社会に入って、厳しい環境でつらい思いばかりを繰り返すと、自己肯定感が低くなって、生きづらさばかりを覚えることになる。

【沖田】15歳でコーヒーの焙煎士をしている岩野響さんを見て親たちが変わってきたというか。「うちの子にも才能があるはず!」って。

【岩波】でも、「うちの子、特別な才能はないんです」って人もいるから、天才だのなんだのと言われちゃうと、かえって余計なプレッシャー、マイナスだという親御さんもいます。

【沖田】一部の成功者がいることも事実だけど、そればかり見てしまうとしんどい。観察して、その子に合ったものが見つかるといいですね。私も子どもの頃、こういうところが足りないからこういうことしよう、と教えてもらえれば良かったです。