音声SNS「クラブハウス」はなぜ流行しているのか。千葉商科大学国際教養学部の常見陽平准教授は「コロナ禍で人と雑談する機会が減ったなか、音声による会話という温かみのあるコミュニケーションが人々に受け入れられたのではないか」という——。
新しいSNSは概念を説明しにくい
新しいSNS「クラブハウス」が、いま何かと話題だ。音声限定、完全招待制、当面iPhone限定、テキストメッセージの送信不可、音声の録音不可、スピーカーに指定された人のみ発言可能など、何かと「制約」「限定」が多いSNSである。サーバーの負荷が増し、動作が不安定になることもよくある。多くの表記は英語で、完全日本語版になっているともいえない。セキュリティー上での不安を指摘する声や、会話の録音をNGとする規程に関する疑問の声なども散見される。
とはいえ、この約1カ月間、クラブハウスは日々、盛り上がっているかのように見える。さまざまな専門家がこのSNSについて語ってきたが、私は意識高い系ウォッチャーや働き方評論家としての視点からこの現象を読み解いてみたい。「また、常見が構ってほしいと言わんばかりに意識高い系たたきをするのか」「若き老害というが、もう若くないのに。痛い中年だな」「意識高い系よりも、意識低い系のお前が問題だ」と思う人もいるかもしれないが、違う。くれぐれも言うが、この現象を嘲笑するわけでも、意識高い系を揶揄するわけでもない。ややひいた視点で、なぜ、「意識高い系」は新しいSNSに熱くなってしまうのかについて考えたい。
そもそもクラブハウスとは何だろうか? 当初は「音声版Twitter」「音声SNS」という紹介文が散見された。思えば、Twitterも日本版がリリースされ、はやり始めた当初は「簡易ブログ」「ミニブログ」などいう紹介のされ方だった。今なら首をかしげてしまう紹介文である。もっとも、言わんとしていることはよく分かる。新しいSNS(に限らずリアルなビジネスも含め、新しいサービス)は、概念を説明しにくいものなのである。