「クラブハウスにハマっている」にはさまざまな意味がある

誰かが部屋を開き、スピーカーとして指定された人が話をするという仕組み自体はシンプルだ。ただ、シンプルであるがゆえに奥が深い。使い方は無限に広がる。セミナー、公開討論会、同窓会、飲み会、テレビやラジオの視聴パーティー、さらには合コン、なりきりパーティー、生演奏、ヒップホップのバトルなど、活用の仕方も、そこでのテーマ設定も多様だ。話題も政治・経済、メディアの未来、SDGsから、作品の感想戦、他愛もない話など多様だ。先日、お邪魔した部屋では私の友人・知人が数名で「くまモン」がいかにかわいらしいか、ひたすら語りあっていた。

イベントを企画したり、スピーカーになったりする人もいる一方で、ひたすら会話を聴き続ける人もいる。その聴き方も、家事をしながら、移動しながら、風呂に入りながら、読書やネットサーフィンなどをしながら、ベッドに横たわりながらなど多様だ。車移動の際も、スマホの操作をせずに聴きっぱなしにする前提ならBluetoothでカーオーディオに音を飛ばし、楽しむことができる。

スマートフォンを使用する若い女性
写真=iStock.com/Geber86
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思えば、リモートワークが広がり、何かを聴きながら仕事をする機会がふえた。そういえばウェビナーに登壇するたびに「聴いていたよ」と声をかけられることが増えた。そうか、見るのではなく、聴くのか。そんな「ながら時代」にクラブハウスは合っている。

前提として確認しておきたいのは、「クラブハウスにハマっている」という言葉自体、意味が多様であるということだ。クラブハウスの何にどうハマっているのかを確認するべきである。自身で積極的にオンラインイベントを開催し、モデレーターや発言者になることを指すのか、そこでの刺激的な議論を観客として楽しむのか、つながりが広がることにワクワクするのか、旧友との再会を少人数で楽しむのか、ひたすらゆるく聴いているのか、楽しみ方には違いがあるのである。

クラブハウスの面白さとは何だろう?

クラブハウスが盛り上がる理由はよく分かる。導入から普及期のこの1カ月は、完全招待制ということもあり、レア感、特別感というものもある。

著名人の話を直接聴くことができるし、ひょっとすると会話をすることができるかもしれない。別に登壇者と会話ができなくても、刺激的、魅力的な座組みで、しかも旬なテーマのイベントが連発される。例えば、森首相の失言・辞任問題の際には、多数のroomが立ち上がり、男女平等に関する議論が巻き起こった。テレビに出演している著名人同士が突然、この場だけのトークを始める。気鋭のベンチャー経営者や投資家が座談会を始める。これが突発的に起こり、無料で楽しむことができるのは魅力的である。