カウンセリングは信頼してもらうところから始まる

それではカウンセリングとは、どのようなものでしょうか。

困っている・苦しんでいる・つらい・さみしい・自分が悪いのではないか、といったことを「気軽」に相談できるようにすることが、カウンセリングの役割です。

茂木健一郎・信田さよ子・山崎聡一郎『明日、学校へ行きたくない 言葉にならない思いを抱える君へ』(KADOKAWA)
茂木健一郎・信田さよ子・山崎聡一郎『明日、学校へ行きたくない 言葉にならない思いを抱える君へ』(KADOKAWA)

私たちカウンセラーは、相談する人(クライエント)の秘密を守ったうえで、ていねいに話を聞きます。いちばん大切なのは、クライエントがカウンセラーを少しでも信頼できると思い、ほっと安心できる状態にすることです。

カウンセラーは正しい方向に導いたり、アドバイスをしたりする人ではありません。目の前にいるクライエントの語る言葉を「そのまま信じる」ことを私は心がけています。

誰にも話せなかったことを話してくれているクライエントを信じるところから、カウンセリングは始まります。そして苦しんだり、傷ついたりしていると話せたこと、助けを求められたことは「すばらしい」と伝えるようにしていますね。

カウンセラーとして思うのは、自分ではどうしようもない、ギブアップだと思ったところから、人は変われるということです。とにかくだれかに頼ろう、そう思った方がはるかに安全ですし、楽になれるはずです。依存は良くないといわれることも多いですが、それは誤解です。人はそんなに多くのものを背負えないのですから、どんどん依存すればいいんです。

自分を否定されない場所を探そう

自分が安心できるものや場所を探すのもいいかもしれません。追いつめられた方には、豊かな自然のなかにある、安全な病院を紹介することがあります。なかには飼っている犬やねこがいるというだけで、生きられる人もいるんですよ。ペットは自分を絶対に否定しないから、それがいいんですね。

ペットがいなかったら、本を読むことをおすすめします。本を読んでいると、宇宙や海底、どこにでも行けるし、世界の豊かさがわかる。図書館というのも、公共性をもった居場所ですから、図書館でとにかく本を読み、自分が安心できる、没入できる世界を見つけられるといいなと思います。ゲームもまた、現実ではない世界に入るという意味では、少し読書と似ていますよね。どれもポイントは、自分を否定しないということです。