5年かけてタイにある工場を黒字化

グローバル化、ということでは、1996年にイギリスで、回転油圧シリンダを作るための技術指導(技術移転)など、たくさんの取り組みがありましたが、タイとメキシコに工場を建てたのは21世紀に入ってからです。

2003年にタイの工業団地(チョンブリ)に、日産からタイ工場の全株を取得することで、拠点をつくりました。とはいっても最初は苦労しました。

すでに日産の企業文化を持つところに、キタガワのオリジナルの工程を確立するために、コミュニケーションの充実化、従業員の日本の工場での研修、修繕工事や備品の内製化、調達先の開拓、過剰な機材や材料のストックの削減など、基本的なことの取り組みを一つひとつ積み重ねていきました。結果、なんとか黒字になるのに5年かかりました。

広島トクヤマの工場
北川鉄工所のメキシコ工場(写真提供=北川鉄工所)

続く本格的な海外工場としてのメキシコ工場の立ち上げは2013年でした。もちろんその間に中国(瀋陽)での工場の立ち上げなどもありましたが、メキシコ、アメリカ、カナダの顧客へのサポートを目的としたメキシコ工場は素材から加工までの一貫生産です。

メキシコ工場の立ち上げでは、福山工場新設などの経験がものをいって、設備設計から据え付け、現地人へのオペレーション指導、稼働といった一連の生産体制まで、1年半ほどでこぎつけました。

会社の課題は常に「人材の育成」

——アメリカのトランプ大統領の政権下ではメキシコとアメリカとの間で、いくつもの問題が生じたと思いますが。

【北川】経済には常に政治動向が反映されますが、アメリカとメキシコの経済的結びつきはいまさら切り離しようがないでしょう。クルマなどのモノを造ろうとすれば、取引のネットワーク(サプライチェーン)による工程は不可欠です。

——会社としての現在の課題は何でしょう。

【北川】常に人材の育成です。さまざまなレベルで必要ですが、よいマネジメントが問われています。リーダーの育成の必要性ということです。これまでうまくいっていた方法でも、社会環境、経済環境などが変わると、私たちも変わらねばなりません。

製品開発を続ける、工程改善を続ける、顧客との関係を発展させるといった基本を守るためにも、かつて正しかった、という条件も変えていかねばねばなりません。

(インタビュー・文=中沢孝夫・福井県立大学名誉教授)
【関連記事】
「鳥貴族より店舗数が多い」日本一の焼き鳥チェーン大吉がコロナ自粛でも強いワケ
元海自特殊部隊員が語る「中国が尖閣諸島に手を出せない理由」
「仕事やお金を失ってもやめられない」性欲の強さと関係なく発症する"セックス依存症"の怖さ
会議で重箱の隅つつく「めんどくさい人」を一発で黙らせる天才的な質問
40代で一気に「顔の老化」が進む人が毎朝食べているもの