新政権を注視する中国の胸中
1月20日、米国の第46代大統領にジョー・バイデン氏が就任した。それに前後して行われた主要閣僚の公聴会では、国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏や、国防長官に指名されたロイド・オースティン氏は、明確に、中国に対して強硬な姿勢で臨む考えを示した。そうした対中のスタンスはトランプ政権と同じ、あるいは前政権よりも厳しいトーンの部分がある。
一方、中国はITなど先端分野の強化策である“中国製造2025”の実現を目指して、国有企業などの製造技術の強化に全力で取り組んでいる。中国は補助金や工場用地の提供などに加えて、これまで以上に強力に海外からの技術吸収に取り組むだろう。それによって中国は米国の圧力に対抗し、自国の発言力を高めることを考えているはずだ。
その意味では、中国企業がいかにして米国企業に追いつき、追い越すことができるかは、今後の世界各国の経済や安全保障にとって重要なファクターになる。現在、わが国企業には素材関連を中心とする高い技術力がある。そうした強みをさらに高め、米国からも中国からも必要とされるポジションを得ることが、わが国と経済の成長に最も必要な要素になるだろう。
対中強硬路線には変化なし
バイデン政権の対中強硬姿勢が変わることはないだろう。それは、米民主党の対中姿勢・超党派での対中スタンス、1月下旬時点で判明しているバイデン政権の主要閣僚(候補含む)の発言からもよく分かる。
米国の民主党内には、共和党保守派以上に中国に対して厳しい見解を持つ議員がいる。代表的な人物が、ナンシー・ペロシ下院議長だ。同氏は中国との関係を重視したオバマ政権下でも、チベットなどをめぐる人権問題に対して厳しい姿勢を示した。また、伝統的に労働組合を重要な支持層としてきた民主党は、雇用を守るという点でも中国に対して厳しい考えを持っている。
また、米国の対中強硬姿勢は超党派の取り組みだ。それはトランプ前政権の対中政策から確認できる。
トランプ氏は米国を分断した。同氏の経済政策は貧富の差を拡大させ、人種差別問題を深刻化させた。また、新型コロナウイルス感染対策の不備によってアフリカ系アメリカ人などの感染率が相対的に高くなったことも、米国を分断した要因だ。