「自粛」が「萎縮」になることは避けなければいけない
例えば、デジタル化を考えても、さまざまな分野で、アナログとデジタルをミックスして、面白い製品やサービスが生まれるでしょう。例えば、「一配慮・一手間」に長けたヒトの熟練と、ロボットによる自動化がセットになった、協働ロボットのような分野ですね。おもてなしのサービス業のデジタル化も興味深い。
また、現場の力の強さによるサプライチェーンの強靭さをいかして、国内経済の回復立ち上がりをスムーズにさせることや、海外で生まれてくる回復需要の供給者として、一定以上の役割を果たすこともできるでしょう。
さらに、オイルショックの時のように、産業構造の転換のきっかけにもなります。企業の合従連衡、統合などが大規模に起きる可能性があります。
ただし、自粛マインドが強くなりすぎてしまって、ポストコロナの時代にも萎縮してしまうようなことが起きれば、復活に向けたエネルギーは生まれません。欧米は日本よりも心理的に強気で、自粛をしないことが、経済活動への強気や積極性につながっていると考えることもできます。
実際に、ウィズコロナの現在でも、GDPの統計を国際比較すると、日本は、感染状況の割には経済の落ち込みが大きく、回復のペースが鈍いというデータがあり、懸念されるところです。
感染を抑えた日本のよさをきちんと認識するべき
——今後、最も懸念されていることはなんですか。
一番懸念されるのは、企業の投資の萎縮です。そもそも日本企業はバブル崩壊の傷をいまだにひきずっていて、コロナショックの前から自信を失っていました。
例えば、自己資本比率と設備投資です。金融崩壊の翌年となる1999年から、それまで19%前後でずっと横ばいだった自己資本比率が、急上昇し始め、2019年の42%に至るまで20年間伸び続けています。
企業全体のキャッシュフローに対する設備投資の比率も、バブル崩壊の1991年を境に落ち込み始め、2000年代前半からほぼ40%前後で横ばいを続けています。
しかし、日本企業の利益率と生産性はリーマンショックのころが大底で、そこからうなぎ登りに改善しています。それでも投資をせずにカネをため込む姿勢が、まだ続いています。
自信を失った背景には、バブル崩壊の後、「自分たちの経営のあり方に問題があったのではないか」と、アメリカへの劣等感をもったことがあると考えています。ポストコロナでは、感染を抑えた日本のよさをきちんと認識し、そして日本企業がやってきたことの良さも思い出してほしい。