ジャック・マーが拘束されている可能性は低い
アリババグループが政府の槍玉にあげられるのは今回が初めてではない。
日本でもよく知られているモバイル決済アプリ「支付宝」(アリペイ)の店頭決済機能導入時には、リスクがあるとして金融当局から該当サービスの停止命令を受けた。また、アプリから発行できるバーチャルクレジットカード・サービスは業務停止を言い渡された。今回もまた経済的な判断での規制であり、ジャック・マーの“失踪”も逆風下で目立たぬよう姿を隠しているだけとの見方が中国では強い。
一方で、今回の事態はこれまでになかった、新たな動きとの見方もある。
毎年年末に開催される中央経済工作会議は、中国共産党の経済関連でもっとも重要な会議だが、ここにプラットフォーム企業規制方針が盛り込まれた。2021年にはさらに多くの規制が実施されることは間違いない。
「ハイテク国家」を代表するプラットフォーム企業は、中国にとって金の卵とも言える。強い規制は中国の経済、イノベーションにとってマイナスになりかねないが、それでも規制を断行するのは、デジタルエコノミーを支配し国家に比肩しうる力を持ったプラットフォーム企業を見すごせなくなった可能性はゼロではない。
2022年には中国共産党の党大会が開催される。習近平総書記の続投が有力視されているが、党大会の前年は毎回、人事をめぐってさまざまな駆け引きがくり広げられる政治の季節となる。アリババグループへの逆風とジャック・マーの“失踪”もその物語の一部となるのか。今後の展開を注視する必要があるだろう。