認知症予防には聴力の維持と適切な生活習慣が重要

社会的孤立に関連する病気として、うつ病があります。

新井平伊『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)
新井平伊『脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法』(文春新書)

原因は正確にわかっていませんが、ストレスによる海馬の萎縮や、脳内の神経伝達物質で気分に関わるノルアドレナリンやセロトニンの低下によると考えられています。

アミロイドβが関わっているという説もあります。適切な治療によって回復する人も多いですが、疫学的には認知症に1.7倍なりやすいというデータがあります。認知症へ移行する例は、高齢者に目立ちます。

軽いうつ状態である適応障害を患う人も増えています。ストレスを感じやすい性質の人がストレスの多い環境に置かれると、自律神経に異常が出たり、眠れなかったり、精神的に不安定になったりします。言い換えれば軽いうつですが、長引くと本当のうつ病になってしまいます。

うつ病では、ノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質に異常をきたし、症状としては意欲の低下などがあります。前述した運動や睡眠が脳の健康に個々に関わっているとすれば、聴力低下と社会的孤立とうつ病は、互いにそれぞれを巻き込みながら、脳の老化を進めます。

疫学的調査結果の解釈が難しいのは、原因なのか結果なのかの判断です。どうしても、社会的な活動性が低い老人は認知症になりやすい、という単純な結果を導きがちです。しかし実際は、まず脳の正常老化があり、意欲の低下があり、生活習慣病や聴力低下が関連して孤立を深め、社会的な活動性が低くなって、最終的に認知症に至るケースが考えられます。

適切な運動や睡眠、聴力の維持で社会的な活動性を保てば、意と情が活性化され、脳の老化を防ぐこともできる可能性があるわけです。

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