河合は「あの時に比べると、うちは体力がついた」と表現する。

「リーマンショックの時は赤字が4600億。前年より1割5分も生産台数が減って、大きな赤字になった。それがコロナ禍では生産台数が前年よりも2割減ったにもかかわらず、5000億の黒字を出せることになった。合わせて1兆円ぐらいの差が出たわけだ。 なにしろリーマンショックから10年で損益分岐点を200万台くらい下げることができたのだから、大きなことだ」

すべては現場の小さな積み重ねだ

「体力をつけるには作り方を改善するしかないんだ。商品の売値は変わらない。原材料の仕入れ値だって変わらない。企業体力をつけるには作り方を変えて安くするしかない。そして安く作るとは、少ない人数でいいものを作ることだ。

野地秩嘉『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)
野地秩嘉『トヨタの危機管理 どんな時代でも「黒字化」できる底力』(プレジデント社)

僕ら経営側は生産性をこれだけ上げろ、総費用をこれだけ下げろという、ある程度の目標は出す。しかし、それに対して現場のみんなが自分から、よし、これぐらい改善しよう、人工(にんく=1日に働く作業量の単位)も減らそう、原価を安くしようと考えることが重要だ。

軍手1枚が汚れたら捨てるのじゃなくて、洗ってもう一回、違うところで使う。工具を入れるビニール袋を今までは捨てとったけど、そのビニール袋を他で使う。そういう小さなことの積み重ねですよ。それを一人一人が毎日、自分からやる。結果としてそれが黒字に結びついた。赤字からの回復は大きなことを1回やったわけじゃない」

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