歳をとるにつれて長くまで働きたいと思っている人が増える

この結果をもってして、内閣府「平成29年版高齢社会白書」では「70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる」としている。これが、政府が依拠している「8割の人が65歳を超えても働きたいと願っている」という前提の背景にあるデータなのだ。

内閣府「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」でも類似した調査を行っている。同調査は15歳以上のすべての人を対象としている点で先の調査とは異なるが、やはり何歳まで仕事をしたいかを調べている。

その年齢は、60歳以下が25.7%、61~65歳が30.7%、66~70歳が21.5%、71歳以上が16.1%となっている。その他を除くと、再雇用の期限までに引退したい人が6割、それ以上働きたい人が4割といったところである。さらに、歳をとるにつれて長くまで働きたいと思っている人が増えるといったこともこの調査からうかがえる。

こうしてみると、高齢者の多くが歳をとっても働きたいと思っているということはたしかに正確な事実のように思える。

「生活のため」にいつまでも働かざるを得ない

ところで、両調査の設問文はどうなっているのか。細かな文言の違いこそあるものの、両調査とも「あなたは、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいですか」と聞いている。

しかし、改めてみると、この聞き方はなんともよくわからない聞き方ではないか。一見すると、なるほど働くことへの意欲を聞いている質問にも見える。しかし、異なる視点で捉えれば、生活のためにいつまで働かざるを得ないかを聞いているようにも見えるのだ。

多くの人は経済上の理由で歳をとっても働かなくてはならないから働く。これらの統計が指し示しているのは単にそうした事実なのではないだろうか。