このほど財務省が発表した貿易統計によると、2008年度の日本の貿易収支は、28年ぶりに赤字となることが確定した。世界同時不況と円高が輸出産業を直撃した格好だが、貿易立国を支えた果敢な海外戦略が、皮肉にも赤字を助長させることにも。その本質は――。
「外貨準備」の異変が意味することとは
日本の外貨準備高に異変が起きている。外貨準備高は、対外債務の返済や輸入代金の決済など、国際収支決済のために通貨当局(政府・日銀)が保有している公的な準備資産のこと。日本では財務省が毎月発表していて、今年3月末の外貨準備高は1兆185億4900万ドルに達している。
2008年12月末には過去最高の1兆306億4700万ドルを記録、数字だけを見れば日本の外貨準備高は依然として高水準にあるといえるが、実は05年辺りから変調をきたしている。
それまで世界でダントツ1位の外貨準備高を誇った日本だったが、06年初頭にその座を中国に譲り渡した。貿易黒字の急増を背景に、中国の外貨準備高は現在も右肩上がりで増え続けている。対する日本の外貨準備高は、ほぼ横這いに近く、中国との差は開く一方となっている(図参照)。
中国に抜かれたこと自体は心配するに当たらない。外貨準備高をいくら積み上げても、為替変動に対する抑止力や対外的な支払い能力の証しになるくらいで、それがそのまま国力を反映しているわけではないからだ。いわば備蓄資源のようなもので、少なすぎるのは困るものの、多ければいいという筋合いのものでもない。そもそも日本や中国の外貨準備高は、主に米国債を購入・運用する形で保有しているので、(米国債の暴落を心配する)アメリカから圧力がかかれば売ろうにも売れない、塩漬けが大前提とされる代物なのだ。
問題なのは外貨準備高の中身である。
日本の外貨準備高の伸びが05年頃から鈍った大きな理由の一つは、日銀が為替介入をまったくしなくなったからだ。1970年代以降、日本は円高を食い止めるために再三、「円売り・ドル買い」の為替介入を行ってきた。この円高抑制・ドル防衛のための為替介入により、日本の外貨準備高は飛躍的に増大した。今は中国が元高抑制のために「元売り・ドル買い」の為替介入を行っていて、それが外貨準備高急増の要因にもなっている。