仲間と協力する『ONEPIECE』、自力で突破する『鬼滅の刃』

鬼滅の刃』と『ONEPIECE』。『少年ジャンプ』から生まれた、この二大漫画を比較することで、『鬼滅の刃』の特徴と魅力が浮かび上がります。

父性不在の時代において、『ONEPIECE』では「仲間」という答えを提案しています。
父滅の刃 消えた父親はどこへ』の「第6章」で解説したように、カリスマ的リーダーや権威的なリーダー、古い時代の「強い父性」的なリーダーはもはや時代遅れである。リーダーシップではなく、「仲間」同士が信頼し、協力、連携、共闘して、強大な敵を倒し、大きな困難を乗り越えていける! これが、『ONEPIECE』の特徴です。

では、『鬼滅の刃』はどのような作品なのか? 父性不在の時代において、やはり父性というものは重要ではないのか。誰も頼りにならなければ、自分が「父親」になるしかない。自らの父性と強さに磨きをかけて、仲間を牽引し、自分の力で壁を乗り越えて行くしかない! それが、『鬼滅の刃』です。

「自分でなんとかしろ!」という父性的厳しさ

『鬼滅の刃』のストーリー展開の特徴として、「分断」があります。

鼓屋敷での戦い。那田蜘蛛山での戦い。無限城での決戦。仲間と一緒に乗り込むものの、分断されてしまい、結局、一人ひとりが強大な鬼と対峙することになるのです。無限列車の戦いも、仲間はそばにいながらも眠らされてしまったため、最初は炭治郎がたった一人で戦うしかありませんでした。

強い鬼との戦いで、瀕死の重傷となり、もうダメ。そんな最後の最後に、仲間や柱が駆けつけて助けてくれる。協力して鬼を倒すという展開になりますが、戦いのほとんどは「1対1」の孤独なもの。自分で鬼の弱点を見抜き、自分で突破していくしかないのです。

自らが主体的に行動し、自分が強くなり、自己の責任において、自分で突破するしかない! そうでなければ、死ぬだけ。非常に厳しい、ストーリーです。その厳しさが「父性」なのです。「仲間と協力しよう!」という『ONEPIECE』。「自分でなんとかしろ!」という『鬼滅の刃』。全く対照的な二作品と言えます。