バフェット氏がこのタイミングで日本株に手を伸ばした理由

香港は中国に押さえられてしまって中国化されつつあり、2020年6月には香港国家安全法も施行されました。それで外国企業も香港から逃げ出しています。ピーター・タスカ氏という著名なイギリス出身の経済アナリストがいるのですが、かつてパリミキ(三城ホールディングス、7455)の社外役員の経験もあり、日本の事情をとことん知っている方です(なお、私は同社の顧問をやっていましたので、この方の能力をよく知っています)。

2020年の株価暴落のイメージ
写真=iStock.com/solarseven
※写真はイメージです

そのタスカ氏が、英文ニュースサイトの「ジャパン・フォワード」への寄稿のなかで「香港の代わりとしてオーストラリアは遠すぎる。台湾は中国に近いからチャイナリスクがある。香港と近いシンガポールは距離的にはいいけれども、北東アジアをカバーするには理想的なところではない。だから、ロンドンとニューヨークとの時差を考えても、最適なのは東京だ」と述べています。

しかも、イギリスの調査グループの資料でも、東京はニューヨーク、ロンドンに次ぐ第3位、上海、シンガポール、香港より上位なので国際金融センターになってもおかしくないと指摘されているのです。今後、世界経済に対する日本の影響力はますます大きくなるに違いありません。

このことが、バフェット氏が日本株に手を伸ばした理由です。

バフェット氏は日本のITの技術開発力を高く評価

また、経済面で日本が安全なことも1つの理由になっています。

実はこれから金利はどこかで上がっていきますが、そのときに借金の利払いを自分の会社の利益でまかなえていないゾンビ企業も増えていくわけです。

『日本経済新聞』による2018年の統計では、ゾンビ企業は世界に5300社もありました。これは10年前の2倍を超えています。つまり、収益力は弱いけれども、金融緩和の影響によって借金の利率も低くなったため延命をしたのです。

ゾンビ企業の国別の主な内訳は、アメリカが923社、ヨーロッパが1439社、インドが617社、中国が431社、日本が109社です。

ゾンビ企業が少ない日本は経済面で安全だということになります。5年先、10年先を考えれば、やはり金利は上がっていくでしょう。この点を案外、バフェット氏は重視しているのです。

さらに技術開発力という理由もあります。米中新冷戦ではITの力が鍵になっていますが、バフェット氏は日本のITの技術開発力を高く評価しているのです。

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