巣ごもり消費で家庭用アイスクリームは特需に
新型コロナウイルスの影響で例年とは様変わりしたが、それでも年末年始商戦が続いている。宴会などが自粛となるご時世ゆえ、総じて、在宅で楽しむ食品の売れゆきがよい。
全国各地のスーパーやコンビニで買える「家庭用アイスクリーム」はその代表格だ。巣ごもり消費の影響で、業界では春から夏に“マルチパック特需”が起き、4~7月は市場全体で対前年比約102.9%(インテージデータ)を記録した。マルチパックとは、複数の個数が紙箱や袋に入った商品をさす。
近年は夏だけでなく冬に楽しむ消費者も増え、データによっては「夏アイス65%:冬アイス35%」(※)の割合になるという。
だが、昔から12月に最も売れるブランドがある。「ハーゲンダッツ」だ。
1984年に日本に上陸して以来、昨年までの36年間、12月の売り上げが最も多い、いわば“冬の女王”――。そんなブランドだが、クリスマスを彩るアイスクリームケーキは積極展開しない。
なぜ、こうしたイベント型商品を出さなくても12月によく売れるのか。その理由をマーケティングの責任者に聞き、合わせて消費者心理も探ってみた。
※定番商品のほか、夏アイスは春夏向け商品、冬アイスは秋冬向け商品が中心となる。
カップアイスクリームで「スイーツ感」を訴求
「もともとハーゲンダッツは冬の需要が強く、今年も秋冬向け限定商品をミニカップやクリスピーサンドで発売しています。過去にはアイスクリームケーキを販売しており、意識はしていますが、現在は一般的な商品でスイーツ感を打ち出すのが基本姿勢です」
ハーゲンダッツ ジャパンの黒岩俊介氏(ブランド戦略本部マネージャー)はこう語る。長年ブランド戦略を担当しており、さらにこう話す。
「消費者調査では、お客さまも満足されており、カップアイスクリームで十分な価値が提供できていると考えています。ブランドの歴史の中で、徐々に商品を進化させ、例えば2007年から展開したカップアイス『ハーゲンダッツ アイスクリーム ドルチェ』シリーズでは、ティラミスやクレームブリュレ、木苺のミルフィーユといった商品で、スイーツ感を訴求してきました」
この秋冬の期間限定品として、11月17日にミニカップ「ショコラトリュフ」(希望小売価格295円+税)という商品を発売した。
「コク深いミルキーなホワイトチョコレートと、優しい甘さのミルクチョコレートを重ねた2層構造にしました。冬ならではの濃厚なアイスクリームです」(黒岩氏)