ちなみにハーゲンダッツ1号店が入居した当時のビル名「プラザ246」は、“テナント不毛のビル”とも言われた。超一等地にありながら、それまで入居する各テナントの売り上げが伸びなかったのだが、それを同ブランドが変えた。

1984年といえば、前年に「東京ディズニーランド」(現・東京ディズニーリゾート)が開業し、若者を中心に海外の文化を取り入れつつ、異日常空間での楽しみ方が浸透していった時代だ。

飲食店では、東京・瀬田(世田谷区)に通称「アメリカ村」と呼ばれた、ファミリーレストラン「イエスタディ」や「プレストンウッド」などがアメリカンな店舗を構えていた。仙川(調布市)の「ストロベリーファーム」を加えたこれらの店も「異日常空間」だった。

自粛疲れの「憂さ晴らし的な消費」で選ばれた

現在のハーゲンダッツの話に戻ろう。全体で年間売り上げ500億円弱のメガブランドは、コロナ禍の2020年、業績が苦戦し、一時、対前年比を想定以上に下回ったという。

ショコラトリュフ(写真提供=ハーゲンダッツジャパン)
ショコラトリュフ(写真提供=ハーゲンダッツ ジャパン)

「日本中が外出自粛となり、どうなるかと思いましたが、若い世代から支持が戻り始めました。5月以降は好調が続き、7月の冷夏にもあまり左右されず、それ以降は順調に推移しています。自粛疲れの中で商品が支持を受けたと考えています」

マーケティングの世界では「消費者はどんどん変化する」と言われるが、コロナ禍の消費者心理は、総じて「先行き不安」と「気分転換」が入り交じったように感じた。

例えば食品では、巣ごもり当初、レトルトカレーは「この機会だから」と高価格品も動いたが、長期化を認識し始めてからは格安品や特売品の比重が高まった、とも聞いた。

一方で、自粛疲れによる憂さ晴らし的な消費もあった。嗜好品のアイスクリームは、主食や副食とは違う購買心理が働いた、ともいえそうだ。

帰省する家族のためにまとめ買い

ところで、なぜハーゲンダッツは12月に売れるのだろう。

「一般的なアイスクリームに比べると濃厚で価格も高く、ごほうび需要もあると思います。12月は最も売れますが、特別なプロモーションをしてきたわけではありません。例えば、年末年始の人が集まる機会でのご利用や、仕事帰りに立ち寄れるコンビニで買うアイスクリームの贅沢品として、選ばれてきた感もあります」

その年末年始が、今年は帰省客などの移動需要が期待できない。