インビジブル・ファミリー(見えざる家族)と呼ぶ消費形態がある。例えば、リタイア世代の夫婦が嗜好品をまとめ買いすることだ。自分たちだけで消費するのではない。離れて暮らす息子や娘一家が帰省した際に、みんなでその商品を楽しむ。
もともとの意味は「近距離に住む身内」のようだが、少し柔軟に解釈すると、遠距離の身内に加えて、友人・知人が集まる食事会などもこの消費形態に近いだろう。
その際に、まとめ買いされるアイスクリーム=ハーゲンダッツの需要は高かった。
「そうした需要が期待できないのは事実ですが、一方で、自宅で過ごす時間は増えています。コロナ禍の今年のお盆の需要も好調でした」
「手の届く贅沢」は今年も手堅い
冒頭で「年末年始商戦が続く」と記したが、今年目立つのは「おうちで××」という販売訴求だ。近年、年の瀬や年明け三が日に休業する大手小売店や飲食店も出てきた。外出自粛の影響で、この年末年始はより目立つかもしれない。
消費者側の視点では、1人で楽しむ「個食化」も進む。「自分へのごほうび」という言葉や消費も、昔に比べて回数が増え、ごほうび商品も低価格化してきた。
2017年冬、「ハーゲンダッツ ジュエル アイスクリームケーキ」という商品が、東京・目黒区の「ストールレストラン」で限定販売された。同店ではカットケーキ(1290円)が提供され、持ち帰りならホールケーキ(6200円)も注文できた。
そうした取り組みも、ここ数年は行っていない。高級アイスクリームとはいえ、ミニカップなら1個200~300円台で買える。そんな「手の届く贅沢」を掲げてきたハーゲンダッツにとって、追い風となる冬になりそうだ。