■検証!そのとき私はどう対処したか
離れて暮らす息子の勧めで入居を決意

新潟県長岡市在住のAさん(80歳)は、東京で暮らす息子さんからの勧めもあって高齢者専用賃貸住宅(高専賃)への入居を決めた。入居の理由は「万が一」に対する備えにほかならない。

高専賃とは、借り手を高齢者に限定しただけで、一般の賃貸住宅と基本的な違いはない。貸し主は都道府県に登録し食事や介護サービスの有無などを公表することが義務づけられている。有料老人ホームと違って気に入らなければすぐに退去できる気軽さから人気を集めているが、高齢者施設と違い行政の目が入りにくいとも言われている。サービス内容や前払い家賃の保全状況など、十分に物件を調べる必要がある。

Aさんの場合、高専賃に入居するまでは、市内のマンションに一人で暮らしてきた。高齢であることは事実だが、日々の暮らしに不自由を感じることはなかった。かといって、先行きに何の不安もないかといえば嘘になってしまう。離れて暮らす家族も「万が一」のことが起きてからでは手遅れとわかっていながら、最適な居場所が見つからないままに時間が経過していた。

05年の国勢調査資料によると、全国の65歳以上の一人暮らし高齢者は386万人(男性105万人、女性281万人)で、10年の予測では471万人(国立社会保障・人口問題研究所推計)にまで増加する。Aさんと同じような不安を抱えながら暮らしている高齢者とその家族は少なくない。

Aさんが入居を決めた高専賃「エルダーマンションアダージョ福住」(08年7月オープン)は、長岡駅から徒歩5分という立地の良さが売りの物件である。「賃貸住宅であっても有料老人ホームなどの施設に負けないサービスを提供できるコンセプトづくりに時間をかけました」と総支配人の中村是浩さんが話すように、入居者と家族に「安心・安全・快適」を届けることにこだわっている。

介護が必要になっても暮らし続けることができる「終身賃貸契約」を基本とし、契約の更新手続きも不要。看護師、介護福祉士が常駐し、ライフサポートサービスと呼ばれる毎日の安否確認、緊急対応、健康相談などを行っている。また、建物内には訪問介護サービスセンターを設け、ケアマネジャーも配置している。在宅医療を手がける診療所の誘致も内定し、入居者には介護・医療の両面からサービスを提供できる体制を整えている。食事も希望すれば1日3食の提供が受けられる。

居室は3種類あり、1LDK(45平方メートル)、1K(36平方メートル)は夫婦で入居することもできる。ワンルーム(20平方メートル)は、高齢者施設のユニットケア型を採用しているので、寝たきり状態になっても介護を受けながら住まい続けることが可能だ。費用は、家賃と管理費の合計で14万7750円から20万6750円で、前払い家賃を支払い、月々の費用を低く抑える設定もある。