モノが売れる“命名”のコツとは何か。「超整理」シリーズなどを生み出した野口悠紀雄氏は「タイトルは、具体的で受け取り手の意識に引っかかるものにしなければならない。コンセプトを的確に表す名前を発明できれば、訴求力が変わる」と説く――。(第5回)
オンラインニュース
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

「地球の密度を測る」はなぜ優れたタイトルなのか

読み手は忙しく、他方で、書籍は毎年多数刊行されています。競争者が多いのですから、いかにして興味を持ってもらうかが、きわめて重要な課題です。そのための手段がタイトルです。

これまでの最高傑作は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、産業革命が進行するイギリスで活躍した物理学者、ヘンリー・キャベンディッシュが付けた「地球の密度を測る」というタイトルです。

これは、ニュートンの法則にある「重力定数」を測定する実験の報告なのですが、「重力定数の測定」という無味乾燥なタイトルではなく、「地球の密度を測る」といっているのです。重力定数の値が分かれば地球の密度が分かるのでこうなるのですが、「地球の密度」という具体的なイメージが提示されているので、大変興味が湧きます。

これと対照的なのが、「無題」、「最近考えていること」などといったタイトルです。これでは「内容は面白くありません」といっているようなものです。読もうという気持ちにはなれないでしょう。