こうした後遺症は、同じコロナウイルスに属するSARS患者の海外の症例でも報告があるため、コロナウイルスに特異な現象なのかもしれません。具体的な後遺症の実態については、今後、5年、10年といった長期的なスパンで事例が確認されていくはずです。

早期に治療で、ウイルスの増殖と免疫の暴走を抑える

繰り返しになりますが、この後遺症は軽症の方にも起こり得ます。

軽症の方でもサイトカインの産生と免疫の暴走は低いレベルで起こっており、自覚のないまま肺炎症状に至っていることは十分に考えられます。

後遺症を負わないためには、症状の初期段階でしっかり医師の診察を受け、症状の進行を抑えることがなにより大切です。

現在、医療の現場では、抗ウイルス薬の「レムデシビル」によるウイルス増殖の抑制だけでなく、免疫の暴走を抑える治療が重要な対策になっています。

2020年7月には、ステロイドの一種「デキサメタゾン」が新型コロナウイルス感染症への処方に対して厚生労働省より承認されました。デキサメタゾンはもともとリウマチの薬で、免疫の暴走を抑制する効果があります。

また、「トシリズマブ」「サリルマブ」「アナキンラ」といった、免疫の暴走をターゲットにした薬剤などについても、承認に向け治験が進んでいます。

早期に治療を開始し、ウイルスの増殖と免疫の暴走を抑えることは、重症化を防ぐだけでなく、後遺症を防ぐことにもつながります。

感染の疑いがある場合は、すぐに医療機関の診察を受けてください。

ウイルスは「生き残る」ために変化し続ける

新型コロナウイルスは、いまこの瞬間も新しいタイプへと変化を続けています。ウイルスは細胞に感染し、自分自身をコピーして増殖するときに、遺伝子に頻繁にエラーを起こします。

つまり、まったく同じ遺伝子を複製するのではなく、少しずつランダムにちがうものを複製しているのです。

その結果、以前より毒性の強いものや、逆に弱いものなど、その特性をどんどん変化させ、より適応し、生存できるウイルスへと変貌を繰り返しています。

新型コロナウイルスのワクチン開発のイメージ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/MrSergiyV)

いま、新型コロナウイルスは生存のためにより感染力を強めている、と考えられています。

現在も世界の感染者数は増加し続けており、アメリカ、ブラジル、インドなどの大国での感染拡大が止まらないほか、現在まで途上国での感染が拡大しています。

6月に世界の感染者数は1000万人を超え、9月には3000万人を突破。また、死亡者数は100万人以上にも達しています。次のページのグラフのように、現在まで新型コロナウイルスの猛威は加速の一途をたどっています。