不名誉で中途半端な「環境対策後進国」
2020年10月26日、菅義偉首相は所信表明演説で「温室効果ガス2050年実質ゼロ」を表明しました。
私は、1966年から当時の厚生省・環境庁の行政官として27年間、93年に退官した後は環境NPOの主宰者として同じく27年間、一貫して環境問題に携わってきました。その間に、かつて公害対策技術先進国として世界をリードする立場にあった日本は、とくに直近20年間は停滞ないしズルズルと後退し、世界的に見れば、いつまで経っても脱炭素社会に舵を切らない、不名誉で中途半端な環境対策後進国になってしまっていたのです。
翌27日の全国紙朝刊はそろって「温室効果ガス2050年実質ゼロ」を1面トップで報じました。それはすなわちマスメディアのみならず日本国民のこの問題に対する関心の高さや歓迎ぶりを表すものだったと思っています。
2020年秋、日米中「脱炭素社会」へのそろい踏み
菅首相の「温室効果ガス2050年実質ゼロ」宣言は、日本の環境政策においては画期的な出来事でしたが、世界を見渡せば、先行するEUはもちろん、米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン候補も同様に「2050年実質ゼロ」の目標を表明しました。また日米両国に先立ち、世界最大の温暖化ガス排出国である中国の習近平国家主席も、9月23日の国連総会で「2060年までの温室効果ガスの実質ゼロ」を表明しています。
つまり2020年秋は、これまで後れを取っていた日米中の3国がそろって脱炭素社会への挑戦を宣言した歴史的な転換点となったのです。