「2050年実質ゼロ」への遠き道のり

図表2は、図表1の集計年度(X軸)と温室効果ガスの排出量(Y軸)をフルスケールに戻し、2050年度の排出量をゼロと仮定して、それを破線の折れ線グラフで表したものです。

日本の温室効果ガス排出量(1990~2050年度)

「第一約束期間のマイナス6%」を日本はどうクリアしたか

1990年がグラフの起点となっているのは、COP3で「京都議定書」が採択された1997年に、温室効果ガスの削減目標の基準年を1990年に定めたことによります(一部の温室効果ガスの基準年は1995年としてもよいことになっています)。

ちなみに京都議定書では、日本に対し「温室効果ガスを2008年から2012年(第一約束期間)の間に、1990年比で6%削減すること」を規定していましたが、日本はその目標を実質的にはクリアすることができませんでした。ただし、他の国の排出削減量を日本政府がお金で買い取った分などを加えて、議定書上ではクリアしています。いわば外国での削減量のゲタをはかせてのクリアです。

なお、グラフの中の2030年の削減目標数値は、2015年7月に安倍前政権が国連気候変動枠組条約事務局に提出した「日本の約束草案」の「2030年度の温室効果ガス削減目標を2013年度比26%減とする(約10億4000万トン)」をそのままグラフ上にプロットしたものです。菅政権が新たな数値目標を提出するまで、国際社会ではこの数値が「日本の約束」となります。

また、菅首相も所信表明演説で温暖化ガスの「実質ゼロ」という言い方をされたように、温室効果ガスを排出した量から吸収源活動(森林吸収源対策、農地管理・牧草地管理・都市緑化活動)によって温室効果ガスを吸収した量を引いて算定することが国際的に認められています。ちなみに2018年度の吸収源活動による吸収量は5590万トン、排出量比で4.5%となっていますが、図表1・図表2ともその吸収分はグラフ上に反映させていません。