「孤独死」の現場を片づける特殊清掃の仕事は危険と隣り合わせだ。特殊清掃員として10年以上のキャリアを持つ上東丙唆祥さんは「現場で最も怖いのはホコリとカビ。肺に入ると死に至ることもある」という。ノンフィクション作家の菅野久美子氏が聞いた——。
孤独死現場のドアはブルーシートで覆われていた
その人の最期と向き合う、特殊清掃というお仕事——。年間約3万人が孤独死する現代ニッポンにおいて、特殊清掃のほとんどを孤独死が占める。
また近年、特殊清掃業者は、孤独死や自殺、殺人現場などの清掃だけでなく、インフルエンザの起きた校舎の消毒や、最近だと新型コロナの発生した社屋の消毒など、危険な現場の第一線で活躍する人たちもいる。
今、特殊清掃の現場で何が起きているのか。今回は、10年以上のキャリアを持つ特殊清掃人である上東丙唆祥氏の現場に密着することで、特殊清掃という仕事から見える日本のリアルに迫りたい。
ソーシャルディスタンスが声高に叫ばれる中、孤独死をめぐる状況はより深刻になりつつある。地域の見守りが手薄になり、遺体の発見がこれまでより遅れているのだ。また、コロナ疑い死という場面に遭遇するケースも増えつつある。
今年の9月上旬、築30年以上とみられる4LDKのマンションに、上東氏と私は立ち入ろうとしていた。関東某所の高級住宅街に佇むこのマンションで、孤独死が発生したのだ。亡くなったのは70代の男性で、死後1カ月以上が経過していたという。
エレベーターが開くと、該当の部屋はすぐにわかった。ブルーシートで玄関のドア全体が覆われていたからだ。