本書が引用するピュー・リサーチ・センターの調査によれば、民主党支持者の価値観はますますリベラルに、共和党支持者の価値観はますます保守になっている。大都市に住む比較的恵まれた白人有権者以外の、郊外や田舎の白人有権者が人種問題や移民問題を契機に共和党にどっと移動し、またマイノリティの人口比が増えたことで民主党が変質したからだ。

米国がかつて経験したことのない事態

現在起きている変化は、白人が遠くない将来に絶対的マジョリティの座から転落することから生じている。米国がいまだかつて経験したことのない事態だ。

日本において移民が増えた結果、日系の比率が50%を割り込むことが予想されればどのような社会現象を生むだろうか。そうした事態が起こる以前に急旋回して社会が保守化するであろうことは想像に難くない。共和党が「不法移民」に不寛容になった背景には、そうした米国の白人の危惧がある。

米国はダイナミズムに富む国だ。不法移民バッシングが煽られる一方、女性の地位向上はこの4年間だけを見ても劇的に意識変化が起きている。18年の中間選挙では白人の高学歴女性は一気に民主党支持に傾いた。#MeToo運動が湧き起こり、また直前にカバノー連邦最高裁判事をめぐる性的暴行疑惑が報じられたためだ。日本では太平洋の向こう側の同盟国の分断を嘆く論調が多いが、分断の底には明白な価値観の差異がある。

米国では、共和党と民主党の競争がどのような対立軸に沿って行われるかが調整される過渡期にあるという見方ができる。白人が都市部と田舎、男女、学歴などの差を超えて1つになれない以上、必ず人種問題以外の対立軸が生じる。それを見守っていこうと思う。

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