「10年で9割が倒産」のウソ

一方で、起業をすることが、とても大きなリスクのように語られることがあります。そのことについて、これから説明をします。

たしかに起業をした人は、公務員や安定した大企業に勤める人に比べて、収入が不安定になりやすいことは事実の一端ではありますが、僕は起業が一か八かのように語られることに、違和感を持っています。

「起業はハイリスク・ハイリターン」
「大儲けできるかもしれないけれど、大損して借金を抱えるかもしれない」

こんなふうに語られることもあると思いますが、実際の起業のリスクとリターンには一般的な認知以上に、歪みが生じています。

代表的な例としては、まことしやかにささやかれてきた「10年で9割の会社が倒産する」というウソです。

まず、この「10年で9割の会社が倒産」の根拠となるデータには、ソースがありません。

一方、中小企業白書の「起業の実態の国際比較」を見てみると、開業率も廃業率も日本は10年後も15年後も4~5%前後であることがわかります。いったい、「10年で9割倒産する」という脅しのような、起業反対派の「にしき御旗みはた」の根拠は、どこにあるのでしょうか。できれば教えてほしいくらいです。 

統計学的に、起業は決してリスキーではない

そもそも、基本的な考え方として、リスクとリターンは釣り合っているものですが、なかにはリスクとリターンが歪んでいることも多いのです。こういった市場の歪みをたちばなあきらさんは「黄金の羽根」と呼び、著書『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)の中で教えてくれていますし、世の成功した人たちは、成功すれば天井知らず、失敗しても出資金の範囲内で責任を取ればよく、自己破産でリセットできる起業を「リスクとリターンが歪んでいる」と認識してどんどん行動を起こしています。

成功が青天井だということがわかりにくければ、起業を単純化して数字にしてみましょう。

A.1回ガチャを回すのに、10万円かかる(資本金、参加費)。
B.10%の確率(10回に1回)で1000万円が当たる(1000万円の利益が出る)。 

さすがに単純化しすぎに見えますが、こんなガチャなら10回、回しますよね? 10回で当たらなくても、20回くらいまでは回してしまうのではないでしょうか? 確率論、期待値的には正しい行動です。A、B、2つの前提条件がきちんと正しいものなら。

しかし、実際の起業はこんな感じだと思います。10回連続で失敗した人なんてあまり見たことがないですし(勝ち負けを単純に50%の事象とした場合、1000分の1以下の確率です)、勝率を10%以上にする努力は随所でできます。

つまり、起業は「一か八かのギャンブル」になることもあれば、「ほぼ勝てるゲーム」になることもある。その違いを生むのが「前提条件」、すなわちゲームでいうところの初期設定やルールなどです。これはたとえば、業種業態、出店場所、価格設定などさまざまなものが挙げられます。

カジノでチップを積む手元
写真=iStock.com/Lacheev
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こうした前提条件が自分に有利なところをうまく探すか、自分に有利な前提条件をうまく設定し、整えれば、もともと「失うものは少なく、得るものは大きい」という有利に歪んだ起業という選択肢が、さらに自分に有利に歪んだものになります。