ニオイの印象は人の記憶に強烈に残る

ニオイの印象=嗅覚的印象は、コミュニケーションに大きな影響を及ぼします。

「視覚や聴覚は大脳皮質の感覚連合野を経由して、扁桃体に入力する。つまりこれらの感覚系では、いったん高次の処理を受けた情報が感情変化を引き起こす(Turner Mishkin and Knapp,1980)。」これに対して、「嗅覚は大脳皮質を介さず直接扁桃体に入力する。(Turner Guputa and Mishkin,1978)。」という研究結果があります。

これについては、体臭多汗研究所所長・五味常明氏が『なぜ一流の男は匂いまでマネージメントするのか』(かんき出版)の中でわかりやすく解説しています。

自分の笑顔を鏡でチェックする男性
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目から入る服装や立ち居振る舞い等といった視覚的印象、あるいは話し方や声のトーン等の聴覚的印象は、一端、脳にある「視床」という場所で色や形などを大まかに仕分けしたのち、それがなんであるかを判別する「大脳皮質」に送られます。ここではじめて「目の前にあるもの」や「聴いたもの」に対する「感情」が生まれます。この仕組みは、五感のうち嗅覚以外は当てはまるとのことです。

これに対して、嗅覚だけは鼻から入ったニオイが、鼻の奥にある「嗅細胞」から「嗅球」を通り、感情や記憶を司る大脳辺縁系ヘと直接入って行きます。言い換えればニオイは、感情と記憶に直接働きかけるルートを通るのです。つまり、人間の感情面に直接的な影響を及ぼすと科学的に立証されているというわけです。

しかも、視覚的、聴覚的印象が短期間の印象に対し、ニオイは長期的に記憶に残ります。したがって、いいニオイの人を好きになったり、逆にイヤなニオイの人を嫌悪したりと、コミュニケーションに大きな影響を及ぼすのです。

「見えるニオイ」への対策も必要

また、「見えるニオイ」の影響力もばかにできません。すぐ思いつくのは、夏場のシャツでしょうか。クールビズの採用以降、ジャケット着用は義務ではなくなり、例年、シャツににじむ脇汗についてよく相談を受けるようになりました。

大学の教員の方からは「脇汗が止まらなくて、黒板に書く時に学生たちに笑われていないか、気になって仕方がない」。外資系企業の社員からは「アメリカ人日本支社長は汗かきで、シャツの脇の部分の汗染みが目立つので、あなたから本人に代わりに伝えていただきたい」と、相手を傷つけかねないハードルの高い要望を受けることも多々あります。その都度、シャツの色を白地にすることや、吸湿性、速乾性のある下着の着用をお勧めしています。

このシャツの下に下着を着るのは湿度の高い日本やアジアならでの独特なスタイルです。本来ワイシャツ自体が下着であり、下着の下に、さらに下着を着用するのは、グローバルスタンダードではないのです。アメリカではオフィスにシャツをストックしていて、汗をかくと着替えるのが一般的な考え方です。