情報がすべて公開されている状態なら、たとえメディア等による「煽り」があったとしても一般国民がここまで盛り上がるともなかったのではないかと思います。

身近に潜む「煽る」手法

広告作りの方法として「煽る」という方法が知られています。

たとえば「世間で話題! 知らない人はかなりヤバい!」「これからの時代、英語ができない人は負け組!」「アフターコロナではリモートワークできない奴は終わる!」といったように、消費者の危機感を煽って商品を売っていくスタイルの広告をよく目にします。

こうした広告は、作り手と受け手の間における「情報の非対称性」を利用しているので、実際には広告でうたっているように「芸能人の間で大人気!」のような事実が本当にあるかどうか、少なくとも広告内の情報だけでは検証できません。

「英語ができなければ負け組」のような広告であっても、「これからの時代がどうなるか」など誰にも確実なことはわかりません。「英語ができなければ負け組」というのはかなりの極論というべきです。

ですが、こうした広告手法がきわめて一般的に採用されているのは、先にあげた「誇張された予想バイアス」等によって、消費者は極論に飛びつきやすいという構造がまずあり、その構造を広告の作り手側は経験を踏まえて「洞察」しているからだと思います。

ただ「極論」が成立するためには、「上級国民叩き」の例で見たように、正しい情報が共有されていない、限定された情報だけで判断している、という状況が必要になります。

「情報弱者」はカモにされやすい

つまり、「煽り」が成立するためには消費者に与える情報を一定程度制限することになりますし、逆に消費者が「煽り」に騙されないためには、なるべく情報をあつめて高いリテラシーを持つほうが良いと言えるでしょう。

特にITを使いこなすのが苦手で最新情報にうとい人を「情弱(情報弱者)」などと揶揄する言い方があります。主に、情報を主体的に収集して活用する力が低い人を指します。

2020年1月に発生したコロナウィルス関連のデマに惑わされマスクやトイレットペーパーを買い占めてしまうのも、正しい情報を持っていないことがひとつの原因になっていました。

最近は下火になった感もありますが、投資情報などをパッケージにして高額で販売する「情報商材ビジネス」が流行し、その時に「カモ」にされたのは、こうした「情弱」とみなされがちな人々でした。

「情弱」と認定される人々は、情報商材の内容は本当に価値があるのか、怪しい業者ではないのかについて自分で情報収集して判断していくのが苦手だとされていて、こうしたビジネスのターゲットになりやすかったのです。

自分が「情弱」かどうか、そもそもあまり関心がない人も多いかと思いますが、あやしい業者に不当に搾取されないためにも、今日の消費者は一定程度の「リテラシー」を持っていることが否応なしに必要な時代になっているのは間違いありません。