ステマの責任を取らされるのは個人

現在、企業から依頼を受けて行われる投稿は#PR表記を付して行われるのが一般的だ。さらに、試供品を事前に送ることで「試した結果」を投稿してもらう。こうすることで、ステルスマーケティングの批判を防いでいるのである。

しかし、#PR表記や試供品の配布は、場合によっては景品表示法の優良誤認に該当するケースがあるものの、厳密に法律で定められているわけではない。そのため、倫理観がない企業はステルスマーケティングとみなしうる表記で依頼する。

インフルエンサー側は、大半が元・一般人である。偶然、アップロードした動画が爆発的にヒットした。偶然、面白い投稿が100万人に読まれた。こんな経験から、一般人はあっという間にインフルエンサーになれる。

インフルエンサーには未成年も多い。多くは芸能プロダクションにも所属しておらず、法律上の研修を受ける機会はない。そんな彼ら・彼女らへ景品表示法や薬機法の遵守を命じるのは、いささか無理がある。しかし、いざステルスマーケティングが明るみに出ると、バッシングされるのは企業よりもインフルエンサー側だ。

「自分は頼まれただけ」では済まされない

最近では、YouTubeで147万人のチャンネル登録者を持つインフルエンサー、てんちむさんが豊胸手術の事実を隠してバストアップ商材をオススメしたことで炎上、謝罪している。

てんちむさんは鋼の心と才覚があり、炎上を笑いに昇華して復活した。しかし、そうはいかない事例の方が多い。

2017年にInstagramで「ダイエット中!29歳二児の母(@hk9060_diet)」というアカウントが、実際には法人運営のアカウントであるにもかかわらず一般人かのような投稿を続けて宣伝したことが判明し、ステルスマーケティングとして炎上。アカウントは削除された。

上記は法人アカウントのため非を法人が被ったものの、同様の事例でインフルエンサーがバッシングされ、アカウント削除や個人特定、さらには返金対応をめぐって訴訟にまで至る事例もある。

たとえば、2012年のペニーオークション詐欺事件では詐欺の首謀者となった法人代表者のみならず、商品を宣伝したインフルエンサーまで刑事訴訟が検討された。「宣伝を請け負っただけで、自分は無関係」とは言えない可能性もあるのだ。