「なけなしのバイト代」でも応援のためなら

キャバ嬢やアイドルなどに投げ銭し、応援することで自分の存在に気づいてもらいたい男性視聴者がいることはわかりやすい。

しかし実際は、視聴者には男性だけでなく女性も多く、配信者も男性や70代のシニア世代もいる。さらに言えば投げ銭も、懐に余裕がある年齢層が高い男性ばかりではない。中には、なけなしのお小遣いから投げ銭する学生もいるのだ。では、なぜ普通の人のライブ配信を見て、時には投げ銭をするのだろうか。

ある大学生は、毎日見るライブ配信がある。「まだそれほど有名じゃないVTuberだけど、自分は推してる」という。毎日見る理由は、「リアルタイムでコメント返してもらえるからかな。声もかわいくて好きだし、友だちに会うみたいな感じで」。

ハマったきっかけは、たまたま初めて視聴した時にIDを呼んでくれたこと。次の日にも見に行ったら、「また来てくれた」と喜んでくれたことだ。前に話したことも覚えてくれており、親しい友人のように感じているそうだ。大学生は、応援の意味でなけなしのバイト代から投げ銭をしたこともある。

SNSがこれだけ普及したことでも分かる通り、人にとってコミュニケーションは根源的な欲求だ。コロナ禍で人と会いづらい状況となっても、代わりにZoomを使ったオンライン飲み会などが流行するなど、誰かとコミュニケーションしたいという欲求は常に我々の中にある。

新たな「場」としてのライブ配信

人気の配信者の場合はそうではないが、一般の配信者の場合、視聴者はまず無視されることがない。コメントをすれば必ずやり取りが生まれ、馴染みの関係になることも少なくないようだ。先程の大学生は、「『就活が心配』とか弱音を吐いた時に心配してもらえたし、一緒に見ている人たちも応援してくれた」と嬉しそうに教えてくれた。

冒頭でご紹介した女子高生にライブ配信する理由について聞いたところ、「いつものメンバーと時間を共有すると癒やされたり、リラックスできるからかな」と答えてくれた。決まった時間の配信が行きつけの店のようになり、行けば仲間がいるという空間ができあがっているというわけだ。

コロナ禍で休校中の時期に、オンラインゲームが小学生男子のコミュニケーションの場となっていたことをご存知だろうか。ボイスチャットで話しながらプレイできたため、待ち合わせをしてゲーム内でおしゃべりするのが楽しいと、夜中までプレイしている子どもは少なくなかった。

コロナ禍では、ゲームのプレイ時間とともにゲーム実況動画のライブ配信の視聴時間も伸びたという。もともとゲーム実況は人気の分野であり、攻略法を知りたくて見たり、スポーツ観戦に近い形で楽しまれていることが多い。見ていて楽しいということは大きな理由だろうが、あえてライブ配信が選ばれる理由は、やはりコミュニケーションの側面が大きいのではないか。

コロナ禍では同じ時間や体験を共有し、コミュニケーションできるリアルの場が消えた。その代わりに、ライブ配信やオンラインゲームがその機能を果たしていたようだ。ライブ配信ではそのような場が多く提供されており、気軽に覗くことができるので、一度ご覧になってはいかがだろうか。コロナ時代におけるコミュニケーションの場であり、表現の場や稼ぐ場ともなるライブ配信は、まだまだ伸びていきそうだ。

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