斎藤復活のカギを握るのは同じ最速130キロ台の40歳173勝左腕

しかし、一番悩んで苦しんでいるのは斎藤本人だろう。つまずきは、前述したように2年目から3年目にかけて負った右肩の故障だ。その後から思い通りのストレートが投げられなくなったに違いない。

斎藤は高校時代に140キロ台、大学時代には150キロ近いストレートを投げていた。ストレートを主体にスライダーやフォークを織り交ぜて打者を打ち取る正統派の投手だった。

故障を機にイメージ通りのストレートが投げられなくなった。その威力を取り戻そうと、もがき苦しんできたのではないか。

ピッチャーがホームに投球
写真=iStock.com/DustyPixel
※写真はイメージです

現状の斎藤と同じ最速130キロ台のストレートでも活躍しているプロはいる。たとえばヤクルトの石川雅規投手。167センチ、73キロと華奢な体でストレートも走らない。そんな自分がプロで生き残るにはどうしたらいいかを考え努力し、シンカーをはじめとする多彩な変化球を身につけた。球速や変化の異なるボールを投げることで、130キロ台のストレートさえ速く見せる術も覚えた。

また、1球1球、プレートを踏む位置を変え、足を上げるタイミングを変える。要はバッターのタイミングを外しバットの芯でボールをとらえられなければいい、という投球術で生き残ってきた。そして通算173勝、現役最多となる11回のシーズン2桁勝利という輝かしい実績を築いた。

40歳になった今季は2勝7敗と不振だが、1軍で投げ続けているのは、自分の個性を知ったうえで生き残る努力をしているからだ。

「ハンカチ王子の遺産だけでよくやってきた。もう重荷を下ろすべき」

学生時代から打者心理を読むクレバーな投球をしていた斎藤なら、自身の現状の力に応じた投球のモデルチェンジはできたはずだ。いや、これからだってできる。それを心の中で待ち望むファンも多いはずだ。

プロ同士が生活をかけて戦う厳しい勝負の世界。斎藤はいま、野球人生のターニングポイントに立っているといっていいだろう。先の2軍戦で打ち込まれたネットニュースの記事のコメントには次のようなものがあった。

「甲子園のハンカチ王子の遺産だけで、ここまでよくプロでやってきたと思う。もう重荷を下ろすべき」

今オフ、プロ10年目で引退となってしまうのか。多くのファン、アンチファンが固唾をのんで見守っているに違いない。

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