名古屋の喫茶店だけど「モーニング」をやらなかった

経営の素人だからこそ「ユニークなビジネス」が生まれる

喫茶店を始めた時から、私は業界の常識に全くとらわれなかった。モーニングサービスを拒否したのも名古屋では常識外れだったし、それ以上におつまみを有料にしたのはそうだ。非常識と言われても気にかけず、お客様を気持ちのいい挨拶と笑顔でお迎えし、徹底的に接客に力を入れた。

常連のお客様に専用カップを購入していただき、そのカップでコーヒーをお出しするマイカップサービスや、お客様の好みに応じてサンドイッチの辛子を抜くなど、独自の細やかなサービスでおもてなしした。具材にこだわった妻が開発した手づくりの軽食も大人気だった。

コーヒーカップとコーヒー豆
写真=iStock.com/SB
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ココイチを始めてからもこの姿勢は変わりなく、お客様にも社員・スタッフにも取引先にも喜んでいただけることをいつも一番に考えた。また、社員ののれん分けでも全国展開でも、フランチャイズビジネスのパッケージそのものが独特で自己流だった。

多くはまず自分たちの利益を優先するものだろうが、私は独立した社員が「頑張って独立してよかった。もっと事業を拡大しよう」という意欲が持てるようにロイヤリティはとらず、食材や備品を店舗に購入してもらうことにより、適正利益を得る方法をとった。だから、利益が上がればみんなが喜び、絶対にトラブルは発生しないのである。

これらは業界の常識からは外れていても、商売のやり方としては理にかなっていたと思う。

一番いいやり方を焦らずに見つけることが成功の秘訣

じっくりでいいから「成功事例」を積み上げていく

成功の秘訣は焦らないことだと思う。FC加盟店を募集してチェーン化を図っていた時も、加盟希望者は厳選していた。というのも、FCは小規模独立志向者にとっては便利なシステムだが、加盟を希望する人はいわばビジネスの素人である。その分、つまらない問題が出てきて、悩むことになる。何よりも不良加盟店を出して、のれんに傷をつけるわけにはいかない。そのために、募集条件のハードルを上げていたのである。

しかし、それでは拡大のスピードはどうしても鈍くなる。その悩みを解決したのがブルームシステムの“発明”であった。入社して現場で実践を積み、一定レベルに達したら独立させるという制度を発足させたことで、独立を目指す優秀な人材が続々と集まってくるようになった。このシステムを導入したことにより、短期間で人間性を見極める難しさが付いて回ったFC加盟店の募集を早々に打ち切ったのである。

これは、じっくりでいいから成功事例を積み上げていきたいという私の思いにも合致していた。結果的にこのやり方が功を奏し、トラブルなく拡大成長を続けることができた。

業界の常識を無視して、徹底した現場主義で道なき道を自分たちで切り開くことによって、壱番屋は着実に発展を続けたのだ。