一般的にセット料金に関するトラブルで最も多いのは、「解約・返金」問題。具体的には、こんなケースである。

まず石材店が購入希望者に、「とりあえず墓地だけでも買いませんか」とアプローチする。例えばセット料金が65万円なら、「墓地だけなら20万円です。売り切れる前に確保してください」と勧めるのだ。石材店にとって、墓地さえ売れば、その上に建てる墓石などの一切合財を手中に収められる。つまり20万円をウリに、数十万~数百万円もの「お墓一式代金」を獲得できる仕組みなのだ。

ところが、後に何らかの事情で購入者が解約、返金を要求すると、その20万円は購入者に戻ってこない。墓地は「無償返還」が原則だからだ。そもそも墓地とは、土地を買って所有権を得るものではなく、「永代使用権」なる使用権を買うにすぎない。つまり、解約は使用権を放棄したという意味で、土地を売り戻すことはできないのだ。

とはいえ、永代使用権にもメリットはある。仮に霊園を経営している法人が破綻した場合、永代使用権はあるので、お墓の立ち退きを求められたり、霊園がただちにマンションになってしまうことはまず考えにくい。ただしこの場合、常駐管理人が置かれなくなったり、管理費がアップしたりと、管理の質が変化、劣化する可能性はある。

民間霊園には「指定石材店」という制度がある。霊園開発にあたって石材店が数社もしくは単独で出資し、出資金に見合った区画販売の権利を持つもの。購入希望者は出資した指定石材店からしか購入できない。石材店を自分で選びたい場合は、指定制度のない公営霊園か、石材店から取引関係にある民間霊園、寺院を紹介してもらう方法で霊園や墓地を探すことになる。

(構成=野崎稚恵)