パンデミック初期には、デジタル技術が生産性維持に役立つという声があちらこちらで聞かれたし、実際そのとおりだと思う。ビデオ会議はこの新しい時代を象徴する技術であり、今後も改良が続くはずだ。現時点の水準を見ても10年前とは隔世の感がある。10年後の2030年も同様に進化しているだろう。

だが、人生は「生産性」を上げることだけがすべてではない。「創造性」や「仲間づくり」も大切である。この3つの要素のバランスが取れた未来が必要だ。人々のつながりを促進し、創造性や仲間づくりを支援するテクノロジーが求められるはずだ。だが、テクノロジーにも限界があることも忘れてはならない。ポストコロナの変化は、1か0かというような極端な切り替わり方ではなく、これまで以上に多くの選択肢や自由度が生まれるのだ。

日本も5年以内には顔認識の規制が必要

マイクロソフトをはじめ、テクノロジー業界では、すでに人工知能(AI)を活用して、人間の能力のサポートや、意思決定の支援、的確な判断を下すためのデータ提供などに取り組んでいる。こうした分野では、テクノロジーがますます重要な役割を果たす。

今後10年間に注目すべき技術は、量子コンピューティング技術だ。サステナビリティ、環境問題やがん治療法など、現代の難題に取り組むうえで、大きな追い風になる。言い換えれば、次の10年の大きなビジネスチャンスであり、優先して取り組むべき課題でもある。

また、AR(拡張現実)や、マイクロソフトのMR(複合現実)ヘッドセット「ホロレンズ」のような技術は、私たちの仕事を効果的にサポートするし、ゆくゆくは新たなコミュニケーションのあり方も提案できるはずだ。

ただし、テクノロジーの世界が良い方向に発展できるかどうは、2つの努力にかかっている。1つ目は、テクノロジー企業が自ら生み出した技術の影響力に対して、社会的に責任を負えるかどうかだ。世界はデジタル技術であふれているが、テクノロジー企業が主体的に大きな責任を負えなければ、良い方向に動くとは言い切れない。何よりも自らが生み出した技術の影響を深く考える責任があるのだ。

もう1つの努力は、政府にもっと迅速に動いてもらい、時代に即した法制度を整備しなければならない。例えば顔認識のような技術を考えた場合、利点だけでなく、リスクも伴う。だからこそ、顔認識技術を使ううえで安全策を講じる法律が欠かせないのだ。

低年収者ほどインターネット利用経験者が少ない