デジタル人民元の可能性「新興国で想定外に普及するか」

今後の展開を考えた時、長期的な可能性として、デジタル人民元が発行され、それを用いる国が増えると、ドルの信認に支えられてきた国際通貨制度は変化する可能性がある。

経済の専門家の間では、今後の国際通貨体制に関する見方はさまざまある。どちらかといえば、中国が通貨覇権を握る可能性は低いとの見方は多いようだ。現在、世界各国の金融機関や企業はドルでの資金調達を重視している。短期間で国際基軸通貨としてのドルの信認が低下する展開は想定しづらい。

また、デジタル人民元の利用によって個人情報が当局に把握されることなどを理由に、中国の法定通貨のデジタル化がドル覇権を脅かすには至らないとの見方もある。それらは重要な論点だ。

ただし、長期的に考えると、デジタル人民元の普及のスピードと範囲の拡大次第で、ドル覇権に何らかの変化が起きる可能性は否定できない。紙幣の保管、輸送には金庫の確保などコストがかかる。通貨偽造や、マネーロンダリングなどのリスクもある。

暗がりで、赤く照らされた山からドル札をとる
写真=iStock.com/Motortion
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それに加えて、新興国地域では、新型コロナウイルスの感染対策などへの財政支出が増えている。債務リスクの高まりは、通貨の信認に関わる。

新興国各国にとって、デジタル化された人民元の活用によって経済面を中心に中国との関係を強め、より効率的かつ安定した通貨体制の確立や、テロ・犯罪集団などの資金獲得を阻止して治安強化を目指すことなどは、大きな魅力に映る可能性がある。

長期的な展開として、アジアやアフリカ地域などでデジタル人民元が想定外に普及する可能性は否定できない。

世界全体の共感を得られる国際通貨体制とは

言い換えれば、いつ、いかなる状況においても、主要先進国が重視してきた国際通貨体制が、世界全体の共感を得るとは限らない。わが国をはじめ主要先進国に求められるのは、災害時の決済手段の確保(停電するとデジタル通貨は利用できなくなる恐れがある)など、より信頼性と持続性が見込める、新しい通貨体制を世界に示し、より多くの賛同を得ることだ。

そのためには、米国を中心に国際協調体制を整え、各国が連携して、中国以上のスピードで法定通貨のデジタル化を支えるシステム開発を進め、信頼感と効率性の高い通貨体制を目指す必要がある。

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