新幹線並みの速度で換気が行われている

昼カラでクラスターが発生したという事実と、カラオケボックス自体が密室で飛沫ひまつが飛び交うイメージがあることから、「カラオケ」のイメージ全体が悪くなっているのです。いくらカラオケボックスの換気設備が整っていても客足が戻りにくい理由の一つになっているのでしょう。

では、密室のカラオケボックスはカラオケ喫茶より、どういった点で安全なのでしょうか。カラオケボックスは防音のために窓が無く、いかにも密室です。しかし、実はそういう構造だからこそ建築基準法でかなりの換気設備を要求されており、実際は基準以上の換気を実現している場合が多いのです。

全国カラオケ事業者協会のウェブサイトには、コロナウイルス感染症対策で知られる藤田医科大学医学部の吉田友昭教授のコメントとして、「カラオケボックスでは通常の法的基準の約3~4.5倍、新幹線並みの非常に速い速度での換気が実現されている」と書かれています。換気が整っている理由は、食事の臭いなどを次の利用者に感じさせないためだったようですが、こうした設備が整っていることから、カラオケボックスではクラスターが発生していないと考えられます。

カラオケボックスではクラスターが発生していない
出所:一般社団法人 全国カラオケ事業者協会HP

全国カラオケ事業者協会のサイトには、スモークを用いた実験結果が掲載されています。これをみると、スモークが毎秒20~40cmの速さで舞い上がってく様子が確認できます。

生活に支障をきたさないカラオケは客足の戻りが遅い

ただ、事業者がどれだけ安全性をアピールしても、心理的な不安の払拭は簡単ではありません。また10月1日から動き出した飲食店支援事業の「Go Toイート」でもカラオケは除外されています。国が後押しするキャンペーンの対象から除外されていれば、消費者の気持ちは動きにくいといえるでしょう。

一方で、同じ余暇消費にあたる、ネイルなどを含む理美容サービスは客足が戻り始めています。日経MJは全国の消費者1000人に調査した結果として、「8月の利用者は16.8%と、19年に平均月1回以上利用した割合を2.6ポイント上回っている」と伝えています。

余暇消費の回復にも、順番があるのです。まずは外食需要が戻り、髪の毛やネイルなどの飛沫ひまつ感染がしにくいもので、かつ、生活に密着しているものへも徐々に需要が戻り始めています。余暇消費のなかで、生活に支障をきたすとまでは言えないスポーツジムやカラオケなどが順番としては最後になってしまうのでしょう。

マイク
写真=iStock.com/rusak
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