八木沼純子

1973年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。1988年、カルガリー五輪のフィギュアスケート女子シングル代表に14歳で選出され、脚光を浴びる。ポニーテールの愛らしいヘアスタイルで人気者に。95年、プロフィギュアスケーターに転向し、「プリンスアイスワールド」に所属。スポーツキャスターや解説者としても活躍している。BSフジ『アスリートのチカラ』などに出演中。


 

5歳でフィギュアスケートの世界に入ってから、33年たちます。子供の頃、私は熱狂的な宝塚のファンでした。

お隣のお姉さんにダビングさせてもらった『ベルサイユのばら』のテープを繰り返し聴いては、あの華やかな世界に憧れて、憧れて。だから、リンクでもクルクル回って踊って、飽きずに何度も“ひとりベルばら”をしていました。

現役時代は、カルガリー五輪の日本代表に選んでいただくなど、お蔭様で、充実した生活を送ることができました。1995年に大学卒業を期にプロへ転向した後は、テレビの司会などの傍ら、年数回、アイスショーに出演しています。

ショーは、春から夏の時期に開催されます。私は総勢30人のチームリーダーを務めています。

先日、荒川静香さんや本田武史さん、そして、高橋大輔さん、村上佳菜子さんなど現役選手も招いての横浜公演が無事終了したばかりです。

練習は、リンクが空く夜の9時から夜中3時くらいまでという強行軍もしばしばです。

ジャンプにスピン、音楽に合わせての振り付け。それも、個人のパートだけでなく、チーム全体でも呼吸をぴたりと合わせないといけません。リーダーとして2時間半のプログラム、40曲分を把握する必要があります。正直、なかなか大変です。ライバルとポイントを争う競技会の場合、数分間のフリースケーティングを終えた直後の心拍数は陸上の1500メートル走と同じくらいと言われます。1回の試合に集中するので、精神的にもすごく疲れます。

一方、2時間以上ほとんど休みなく出演し続けるショーも負けないくらいハード。さらに、ショーの場合、昼の部、夜の部と、それが1日2回あるんです。体力的には、しっかり食べないと持ちません。

でも、私は公演中は、いつもご飯を食べられなくなってしまうんです。もう、カロリーメイトとポカリスエットで凌いでいるというかんじ。胃の中にご飯があると動きが鈍くなってしまうというのが、自分の中にあるんですね。

だから、ご紹介した2軒は、ショーの後に、「やったー!」と自分自身を持ち上げる場所です。スケートからちょっと離れて、いつもの仲間と思いっきりリラックスします。時々、飲み干したワインボトルがボウリングのピンのように立ち並んでいて、ギョッとしてしまいますが(笑)。

小学校2年生で小さな大会に初めて出たときは、リンクを独り占めして、風を切って滑れることがただただ面白かった。そして、プロ16年目の今、改めて実感するのは「表現の道に終わりなし」ということ。さらに磨き上げていきたいですね。