介護施設「面会制限」は老親に想定外のダメージを与える

まずは入所者に対しては下記、4つの制限があるという。

1 外出制限
2 施設内の催しの中止(お花見、遠足、夏祭り、カラオケ、集団によるリハビリ訓練など)
3 訪問歯科、訪問美容、訪問販売の中止または延期
4 家族・親族との面会制限

1は例えば、入所者が病気になり外部の病院で診察を受けると、自動的に1週間の自室待機になる。8月からは少し緩和され、自室待機が課されるのは、コロナ陽性患者受け入れ先に指定された病院で受診した者に限られるように。よって、整形外科などの個人病院受診後は通常通り施設内の食堂で食事を取れるようになった。しかし、不要不急の受診はNG。現状は内科医の訪問診療のみに頼っている。

2はイベント系の行事の中止である。お花見などの外出はもちろん、施設内で行っていたリハビリの一環としてのカラオケ、健康体操なども飛沫感染を恐れて、もう半年は実施していないという。

3も同じで、毎月、行っていた歯科診療、美理容も順延になっているという。

一番大きな問題は4である。外出がままならないお年寄りにとっては家族の面会は大きな喜びのひとつであったはずなのに、現状は冒頭に述べたとおりである。

手をつなぐ高齢のカップル
写真=iStock.com/kazoka30
※写真はイメージです

この施設では、緊急事態宣言中は一切の面会禁止。解除後の現在も、実は面会制限継続中で、LINEによるビデオ通話かガラス越しの面会のどちらかを2週間に1回、最大10分。平日1日3組までという条件で許可をしている段階だという。職員が入所者にマンツーマンで付き添う必要があり、現状60人超の入所者全員に実行するにはこの措置がギリギリとのことだ。

「家族との触れ合いが激減し、認知症が進んでしまった」

ケアマネのSさんはこう話す。

「今はあれもダメ、これもダメで、お年寄りの楽しみをすべて容赦なく奪い取っているような気がして、心が痛いです。実際、家族と触れ合うことで得られる安心感や楽しみ、刺激が少なくなった余波を受けて、フレイル(高齢者が筋力や活動が低下している状態=虚弱)に陥ったり、認知症が進んでしまったりするケースが見られます。ある女性は春先まで『○ちゃん(娘)が来ないわね~』と頻繁に口にしていたのですが、段々と感情表現が乏しくなって、もう今では『○ちゃん』というご家族の名前は言うことはなくなってしまいました」

もちろん、この状態をどうにかしようと懸命に努めている介護施設職員は多いが、現実は厳しい。この施設の場合、夜勤明けの職員が、ひとりで朝イチに1フロア23人の入所者の体温を測らねばならない。排せつや着替えも行って、さらに検温という仕事があるので、コロナ前よりも負担感は確実に大きくなっている。