そこで再度、Aさんは物的証拠に基づく捜査を求めたが、事故直後の実況見分の結果は変わることはなかった。Aさんは「過失運転致傷」の罪で送検され、結果的には不起訴になったものの、「安全運転義務違反」の行政処分を受けることに。対して、Bさんの方は「処分保留」だった。

それにしても、仮にどちらかの当事者の全面的な過失で起こった事故だとしても、明らかな人身事故が、物損事故として処理されてよいのだろうか? 交通捜査に携わってきた複数の警察官に話を聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。

「けがをした当事者に全面的な過失があって、相手にまったくけががない事故の場合は、あえて人身事故にする必要がないんです。形式上、物損事故で処理した方が本人の処分も軽く済みますし、事故処理も早く終わりますので」

しかし、そもそも事故の真実がねじまげられてしまったら、当事者としてはたまったものではないだろう。

保険会社は相手バイクの過失が大と判断

刑事手続においては、不本意ながら「被疑者」として扱われてしまったAさんだが、事故の一部始終を記録していたドライブレコーダーの映像は、民事における過失割合の認定に大きな影響を与えたようだ。

Aさんは語る。

「事故から2年以上かかりましたが、ようやく話し合いがつきました。最終的に任意保険会社の下した過失割合は、相手側が55%、私の方が45%。相手の過失の方が10%高いということになったので、それで妥協しました。もし、ドライブレコーダーの映像がなかったらどうなっていたことでしょう。今回のことで、車はもちろん、バイクにもドライブレコーダーはぜひ取りつけるべきだと痛感しました。もう、装着義務化でもいいと思うほどです」

Aさんが言う通り、最近はクルマ用だけでなく、バイク用としても、防水、防塵機能の高いドライブレコーダーが多数販売されている。

商品としては、車体に取り付けるタイプ、ヘルメットに取り付けるタイプ、さまざまなものがラインアップされているが、追突事故や後ろからのあおり運転などに備えるためには、前方だけでなく後方も撮影できるようなタイプがベストだろう。また、150度以上の広角レンズなら、バイクの両サイドも記録できるのでより安心だ。