「施されたら施し返す、恩返しです。」

今シーズン第1話で、敵対していた中野渡頭取(北大路欣也)から恩赦を受け、礼を言うシーンでのセリフ。大和田は、頭取の派閥に転身し、新たな地位を築こうと画策する。

これは、心理学でいう「返報性の法則」。親切をされたら親切を返したくなる、という心理状態を指します。返報性にはこのような「善意」ばかりではなく、「悪意」の場合もあります。

「悪意」は、おなじみ半沢直樹の名言「やられたらやり返す、倍返しだ」がまさに該当します。つまり「施されたら~」と「やられたら~」は表裏一体です。

「やられたらやり返す、倍返しだ」「10倍返しだ」という考え方は、人によってはよくないと捉えるでしょう。今シリーズに「施されたら施し返す」を入れてきたのは、それへのアンチテーゼかもしれません。半沢に言わせると矛盾が生じるから、大和田に言わせたのかもしれませんね。

本来、「善意の返報性の法則」は見返りを求めないで行うことに意味があります。大和田は、明らかに権謀術数的な意味で発言している点が、なんともいやらしい。しかし、実に大和田常務っぽさを表している。

もう1つの考え方もあります。「やられたらやり返す」発言をした半沢とは違いますよ、というアンチテーゼかもしれません。どちらにしても、実にいやらしいですね(笑)。

「お・し・ま・いdeath!」

第2話では、窮地に追い込まれた半沢に大和田は「私が何とかしてあげようか?」と親切ごかしの救いの手を差し伸べるも、あっさりと断られる。そこで大和田は、親指で首切りのジェスチャーをしながらこのセリフを吐き捨てる。

これは紛れもなく「マウンティング」です。マウンティングとは、本来動物が自分の優位性を表すために相手に対して馬乗りになる行為を指しますが、転じて、人間関係においては「自分のほうが上である」とアピールすることをいいます。

このドラマには、各所に大和田のマウンティングがちりばめられています。

前シリーズで、大和田は出世コースから外れ、半沢も出向させられ、お互いマイナスからの再出発。かつ半沢には屈辱的な土下座をさせられた経験もあり、大和田は逆転しようと様々な仕掛けを考えている。だからマウントを取るようなセリフが出てくる。

「私が何とかしてあげようか?」という誘いに半沢が乗ってくれば、大和田のほうが優位になります。それを無下にされてムッとし、口を衝いて出たセリフでしょう。

首切りのジェスチャーは「私の仲間にならないのであれば抹殺しますよ」という脅しです。そのうえで、後の話では手を組む展開になるのが、このドラマの面白いところですね。