出世できる人と出世できない人は何が違うのか。1万人以上のビジネスパーソンへのインタビューから「40代を後悔しないための方法」を追求してきたコンサルタントの大塚寿氏は、「まさかの異動や降格の時にどういう態度を取るかが、その人の一生を決めることになる」と指摘する――。

※本稿は、大塚寿『できる40代は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

新入社員と陽気な若いマネージャーの握手
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「まさかの異動」「まさかの降格」でどういう態度を取るか

組織においては「まさかの異動」「まさかの降格」といった不条理はつきものです。ただ、この瞬間にどういう態度を取るかが、ビジネスパーソン人生にとって非常に大きな意味を持つというのが、多くの人を見てきた私の確信です。

ここでは、「まさかの出来事」の際の対応で、対照的なビジネスパーソン人生を歩むことになった二人の方のエピソードをご紹介したいと思います。

「営業部長を外す」に反論しなかったDさん

順調に出世街道を歩み、全国規模で事業を展開するある企業の主要支店で、土木部門の営業部長を務めていた40代半ばのDさん。しかし、ある日、本部長から突然、「営業部長を外す」という辞令を言い渡されました。

業績が低迷していたわけではなく、思い当たる節のまったくない突然の降格。ただ、Dさんは「なぜ、自分が……」という言葉を飲み込みました。このとき、亡くなった父親の「サラリーマンは何があっても絶対にふてくされるな。捨て鉢になったら終わりだ」という言葉を思い出したそうです。

そして、その後も粛々と業務を続けました。もちろん、内心は穏やかではなく、何度も「辞めてしまおうか」という衝動に駆られたそうです。

それから1年後。Dさんに再び、元の営業部長復帰の辞令が下りたのです。

実はこのとき、各事業所から営業部長のポストをなくし、本社の土木事業部が一括して管理するという体制を実験的に導入していたのです。そして実験が終わり、元の体制に戻った。つまり、本当は降格でもなんでもなかったのです。

それから8年後、Dさんは取締役に就任しました。Dさんのそのときの「胆力」を評価していた人がいたのです。

この時、他の営業部長は「なぜ、自分が?」と詰め寄ったり、ふてくされたりした人が多かったそうです。だからこそ、何も反論せず、粛々と仕事をこなしたDさんの胆力が際立ち、のちの抜擢につながったのです。