年収1000万円以上のビジネスエリートに「好きな著者」を聞いたところ、カーネギーやドラッカーを凌いで、なんと司馬遼太郎が堂々の1位に輝いた。彼らはなぜ経営書ではなく司馬遼太郎作品を読むのだろうか。

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司馬遼太郎が多くのビジネスマンを魅了してやまないのは、彼の小説が「実務感覚」に溢れているからである。彼の小説は、純文学とも大衆文学とも違う、いわば「司馬文学」としかいいようのない特殊なジャンルを構築している。

たとえば、ある戦争を小説として描く場合、その描き方にはいくつもの方法がある。人間の生死の問題をテーマとして扱う手法もあれば、一大歴史大河ロマンとして描く方法もある。村上春樹は、ノモンハン事件を題材にして『ねじまき鳥クロニクル』を書いているが、そこはやはり彼のこと、非常に文学的なアプローチで描いている。ところが司馬遼太郎は、戦争すらも一種の実務書として描いたというのが私の読み方である。ビジネス書ではないが、戦争に至るまでの経緯や背景を、こと細かに実務レベルから解き明かしているのだ。

(構成=三浦愛美 撮影=若杉憲司)