買収でアップする人件費2000億円

一気に8000人以上が増えた
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一気に8000人以上が増えた

同買収で野村が抱え込んだものがある。

まず08年10月6日、インドの高速売買システム買収の件だ。野村本体の評判はすこぶる悪い。「いくつもピースが抜けているパズルを渡されたようなものだ。うまく機能していない」。なぜなら、この売買システムのホストコンピュータがあるのはインドではなく、米ニューヨークだったからだ。北米地域のリーマンは英バークレーズ証券が買収したため、野村はバークレーズにシステムの使用料を払い続ける必要ができてしまった。買収後、やっとそれに気づいた他の幹部から「誰がデューデリジェンスをしたんだ」と責任を問う声が上がったという。

積みあがる人件費も大きな問題だ。リーマン買収後に、新たに抱えた社員は約8000人。年収が億単位の契約社員から数百万円の社員までばらつきはあるが、平均すると2500万円程度になる。全体では、2000億円のコストアップが予想される。元リーマン社員平均給与と、野村HDの平均給与(39.6歳ベースで1145万円(四季報))を比べると、2倍以上開きがある。しかも、元リーマン社員は2年間野村に在籍を保証され、転職活動は可能だ。霞が関の元次官経験者は、こう一笑する。

「リーマン買収は野村にとってタヌキ(狸)みたいなもの。つまり、タが抜かれてヌキだけ残る。結局、外資に“ヌかれた”だけで何も残りませんよ」