みんなで見るべきは図面よりもライフサイクル表
二世帯住宅の構造は主に3タイプに分かれる。玄関を含め親世帯と子世帯が完全に別々で、いったん外に出ないと行き来できない「完全分離型」。第二は、漫画「サザエさん」のようにすべて一緒の「同居型」、第三は部分的に独立機能を取り入れた「中間型」だ。
親子とはいえ独立した2組の夫婦が同じ屋根の下に住めば摩擦は起こる。その意味で最も火種が少ないのは完全分離型だ。しかし、実際には土地が狭いとか予算が少ないといった事情で同居型を選ぶケースが少なくない。
一般に親世帯は、せっかく二世帯住宅を建てるなら、子ども夫婦や孫と一緒に賑やかに暮らしたいという気持ちが強く、同居型を好む。多いのは息子夫婦との同居だが、設計の打ち合わせの際、親夫婦・子ども夫婦に集まってもらい希望を聞いても、親の要望ばかりで嫁は黙っていることが多い。そのまま設計してしまうと火種が潜むケースを数々見てきた。
嫁を迎え入れて同居型を選ぶ場合は、嫁の意見を最大限尊重するのがコツだ。とはいえ、みんなの前で「希望は?」と聞いても遠慮してしまうので、言いやすい環境づくりが大切だ。
例えば、嫁にしてみれば、1階の親世帯の寝室の真上に自分たちの寝室を置きたくないものだが、みんなが集まっている場では言いにくい。そういう希望は、設計者が親夫婦と子ども夫婦を分けてヒアリングしないと出てこない。もっと言えば、子ども夫婦の言いにくいニーズを察してくれるような設計者、双方の調整役になってくれるような設計者が望ましい。むろん、設計者任せにせず、息子も調整役、橋渡し役を担うべきだ。
実際に同居型で生活を始めると、当初乗り気だった親世帯も後悔することがある。一番多いのが、毎日、朝から晩まで孫の相手で疲れるというものだ。
子ども夫婦が共働きで、親夫婦を保育園代わりに使おうと二世帯同居を選んだ場合はなおさらだ。これは最初は親夫婦が大歓迎でも、そのうち親夫婦が疲労困憊でお手上げというケースだ。
また、世代が違えば、食事の時間も味の好みも異なる。孫も含め、三世代分の食事を誰が担当するのか。高齢者夫婦、若い夫婦、孫の食事を毎日作るのは容易ではない。盆や正月に息子夫婦が帰省したときの楽しさばかり思い描いて同居型を選ぶと、痛い目に遭う。