ほかにも同居型は、利用者が多い分、不満も多くなる。まずトイレは、特に朝、待ち時間が増える。風呂も入る順番や時間帯が不満のもと。湯の温度も好みが違う。さらに、親世帯のエリアを通らなければ浴室に行けない構造だと、子ども夫婦は夜遅くなってシャワーを浴びたくても、気兼ねしてしまう。

キッチンも火種が多い。まず流し台の高さ。姑と嫁の身長が違うため、嫁の身長に合わせると、姑は肘が当たって使いにくく、そのうちキッチンに立たなくなる。逆に姑に合わせれば、嫁は腰をかがめて使うことになる。キッチンは女性にとって自分の城であり、自分好みにしたいはず。そこに複数の主がいれば、当然、摩擦が起こる。リビングやダイニングの照明も親夫婦は新聞が読みやすい蛍光灯を好み、若い夫婦はムードのある白熱灯を好む。ちょっとした違和感も、毎日重なれば大きなストレスとなる。だからこそ同居型はなるべく避けたいのだ。

完全分離型が無理でも、子ども夫婦のプライバシーに配慮した設計は可能だ。一番簡単なのは、鍵がかけられるエリアを用意することだ。基本的に親夫婦が立ち入ることのできない空間だ。共用部分もメーンとサブを造る。キッチンなら1階のメーンキッチンのほかに、2階にミニキッチンを置く。トイレもサブトイレを2階に用意する。

浴室は親世帯側でも子世帯側でもない位置にあるのが理想だが、どうしても浴室が親世帯側になってしまうのなら、子世帯側には簡単なシャワー室を設置してもいい。あるいは、子世帯から親世帯エリアを通らずに浴室に行けるような“抜け道”のある構造にすれば気兼ねせずに利用できる。このように部分的に完全分離型の要素を取り入れるだけでも、同居型の不満を和らげることができる。

とはいえ一番のお勧めは、やはり完全分離型だ。延べ床面積が40坪弱でも不可能ではない。建物が多少窮屈になるかもしれないが、同居型で心が窮屈になるよりはいいだろう。親子といえども、それぞれの夫婦の生活パターンは異なり、それぞれのプライバシーがある。

息子夫婦との同居ともなれば、日中は嫁と姑だけになるため、2人が物理的に分離されている完全分離型を第一に考えるべきだ。これなら、生活パターンやプライバシー確保を巡る摩擦は起こりにくい。ただし完全分離型にもトラブルの火種はある。構造上、コスト高になるうえ、若い夫婦が外国製システムキッチンや高級カーテンを選んでグレードを上げれば、さらにコストがかさむ。床面積は半々なのだからと資金も半々にする、親世帯は割高の買い物をさせられることになる。

家族の変化を想定した「家づくり」を!

家族の変化を想定した「家づくり」を!

ところで、完全分離型にせよ、同居型で共用部分を工夫するにせよ、二世帯住宅づくりの最大の落とし穴がある。あなたが今、建てようとしている家は、家族の何年後に照準を当てているか、入居した瞬間が「ベスト」になるような家を造ろうとしていないか。完成時は家族にとって「グッド」な家でいい。「ベター」になるのが何年後で「ベスト」になるのが何年後かを考えなければならない。完成した時点でベストになるように設計してしまうと、年を追うごとに住み心地は悪くなる。

そこで図のように、同居家族の人生を並べた表を作ることをお勧めする。孫の入学、卒業、結婚など家族の節目ごとに50年くらい先まで、家族全員の年齢を一覧表にするのだ。家族にとって家が一番重要な意味を持つ時期はいつか。ピークをいつ頃に設定するのかが重要なのだ。家族みんなで見るべきなのは図面よりもライフサイクル表だ。家のデザインは、実は人生のデザインにほかならないのである。

(構成=斉藤栄一郎)