本当の目的は「マイナンバーカードの普及」

ところが、政府はあっさり6月末でキャンペーンを終了してしまった。新型コロナによる緊急事態宣言が解除され、これから消費を盛り上げなければならないタイミングで、支えを外したのである。景気対策を考えれば、経産省のポイント還元を継続するか、さらに対象を広げることも考えられたはずなのに、そうした声はほとんど上がらなかった。

政府が予定通り5%還元を打ち切ったのは、総務省の「マイナポイント」事業が控えていたからだろう。消費を下支えする景気対策としてみれば、5000円1回限りの総務省のマイナポイントよりも何回でも5%戻ってくる経産省のポイント還元のほうが効果が大きいのは明らかだ。

それでも総務省に「順番」を譲る必要があったのはなぜか。本当の目的が「景気対策」ではなかったからだろう。

では、何が総務省の目的なのか。

「マイナンバーカードの普及」が本当の狙いだということに、多くの国民は気がついている。

総務省が発表した2020年8月1日現在のマイナンバーカードの普及率は18.2%。導入から4年半が経過したが、国民の6人にひとりしか持っていない。「持っていなくても支障がない」「持っていて便利なことがない」というのが国民の率直な声だろう。

カードにどんなメリットがあるのかハッキリしない

では、総務省はなぜ、「カード」にこだわるのか。個人に付与された番号、いわゆる「マイナンバー」はすべての国民が持っている。では、なぜ、「カード」を持つ必要があるのか。番号だけではなく、カードが普及すると、行政コストが大幅に下がるなど国にとってメリットがあるのか。あるいは、行政サービスを受ける国民にとって何らかのメリットがあるのか。それがはっきりしないから「カード」の普及が進まないのだろう。

実はここへきて「カード」の普及率が若干上がった。4月1日現在は16.0%だったものが、2.2%上昇したのだ。これは4月中旬に決まった「定額給付金」の申請・受給がマイナンバーカードがあれば早く済むという「利便性」が生まれると多くの人が信じたからだ。

ところが、市役所の窓口は大混乱。カードのパスワードが分からず、その問い合わせが激増し、職員は対応に追われることとなった。またシステムがうまく動かず、紙による申請だけに切り替えた自治体が出てきたうえ、結果的に紙のほうが支給が早かった自治体も登場した。結局、「やはりマイナンバーカードは使えない」という印象を残した。