呼び出しの日を毅然として無視するという手もあるが、呼出状に、対象の日に裁判所へ行かないと最大で10万円の過料がありうると書いてあることが気になるだろう。制度発足当初は、裁判所も制度運営で手いっぱいでそういう強硬手段は取らないことが予想できる。正規の裁判員は6人で足りるのに数十人も呼び出すのは、多数の市民が呼び出しを無視することを予期しているからだ。この処分が発動されることはないと思うが、裁判員にさせられることはないものの、過料の危険性が全くないとは断定できない。

候補者が裁判員に選ばれない場合も!
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候補者が裁判員に選ばれない場合も!

また、当日に裁判所へ出ていって、裁判長と堂々と渡り合い、裁判員どころではないという自分の事情を説明して、正規の免除をもらう手もあるだろう。だが、この手は裁判長に逆に説得されて裁判員にさせられてしまう危険性も大きい。

仮に呼出状を受け取ってしまった場合、過料の制裁を逃れるためには「正当な理由」が必要となる。会社員であれば、呼び出しの日に合わせて、会社から特に重要な業務または出張の命令を出してもらえばよい。また、自身の病気や子どもの学校との相談、急病になった家族の看病などを理由にすることもできるだろう。

こうしてみると、裁判員選任期日の裁判所からの呼出状を受け取らないことが、最も安全で確実である。家族にもそう言っておくのがいいが、家族が受け取ってしまった場合には、本人に渡すのを忘れたことにする。これにも罰則はない。

拙著『裁判員制度の正体』ではこのほかにもさまざまな逃げ方を検討しているので、参照してもらえるとうれしいが、裁判員を務めたために自分や家族の人生に何か不都合が起きても、裁判所がそれに対して何らかの責任を取ってくれるということは絶対にない。そのことを国民として忘れてはならない。