昇給にも、昇格にも、転職にもメリットは少ない
「100年に1度の大変な不況。不安でならない。頼るもの、よりどころになるものが、俺には何もないから」50代前半の大手メーカー事業部長は話す。
バブル崩壊後の1992年、大学生の就職戦線が突如として冷え込む。その後、企業のリストラが横行し失業率は上昇したのだが、こうしたなか資格取得がサラリーマンや学生の間でブームとなった。
歴史は繰り返されるといわれるが、果たして、資格はサラリーマンにとってのよりどころとなるのだろうか。
「どんな難関資格を持っていても、給料が上がり、昇進昇格が有利になることはない」。大手IT企業の人事担当役員は話す。企業が社員に求めているのは、資格取得ではなく、成果であるためだ。
企業が下す社員への評価には、2つある。能力評価と実績評価だ。前者はリーダーシップや管理能力など人物に基づくもので、下級管理職までの昇進昇格を決めていく。後者は、成果への評価であり処遇(賃金)に直結する。たいていの場合、資格はどちらにも影響を与えない。
一部には資格給を少額拠出している会社はあるものの、昇給にも昇格にも、さらには転職においても、資格取得による直接的なメリットは少ないのが実態だ。新卒採用でも、「日本商工会議所の簿記検定1級を取得した学生がいたなら、資格そのものではなく、難関資格にチャレンジして取得したその人の人物を評価する」(損保会社の人事担当者)となる。
では、資格がまったく意味がないのかといえば、必ずしもそうでもない。