企業のトップが求める人材として、幅広い知識と1つの専門性を持つ“T字型人間”、あるいは2つの専門を持つ“π字型人間”を挙げるケースは多い。資格は自分の専門を深めるためのツールであり、目標となる。資格取得のための勉強や実技で得た能力やスキルを、仕事に生かしていく。そうしてビジネスマンとしての実力をつけていくのが基本である。

役立つうえに手ごろな穴場資格5
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役立つうえに手ごろな穴場資格5

たいていの場合、人事部は誰がどんな資格を持っているのかを基礎データとしてチェックしている。食品会社の人事担当者は「幅広く資格を取っている社員を、人事はマニアと見なす。逆に、2級から1級と1つの資格に深く挑戦する人を秘かに評価する」と明かす。

さらに、異動では資格が効果を発揮することがある。90年代後半以降、社内公募制を導入する大手会社が増えてきた。公募に応じて試験や面談を受けて異動する仕組みだが、たいていは上司に内緒で応募できる。環境部門、経理財務、法務など、本当は自分がやりたかった部門に、自分の意思で挑戦できるわけだが、関係する資格を持っていれば有利になるケースは多い。

それだけに、会社のなかで自分が何をやりたいのかを決めて、キャリアプランに沿って資格取得を目指すべきだ。また、新しい資格ほど一般的に取りやすい。人気が出る前に取得するのは1つの手だ。

さて、何が起こるかわからない世の中だ。勤務先が倒産する可能性もある。会社を頼らない自己防衛が求められていく。いまのうち、社内の資格奨励制度を利用しフォークリフト運転者などガテン系資格を取っておくのも手だ。35歳以上の再就職はなかなか決まらない。筆者には、勤務先の新聞社が経営破たんして失業した経験があるが、どん底に陥ったとき、最も大切なのは1日を生き延びることだった。アルバイトで汗を流す日々を積み重ね、将来の再生に向かうべし。

(鶴田孝介=撮影)