8月22、23日に放送された「24時間テレビ」(日本テレビ系列)は、募金総額が歴代2位となる大成功だった。その目玉となったのが、高橋尚子さんのチャリティマラソンだ。なぜ日本人はマラソンや駅伝を見るのが大好きなのか。スポーツライターの酒井政人さんが解説する――。

高橋尚子「チームQ」効果で「24時間テレビ」募金額は歴代2位

8月22、23日に放送された夏恒例の番組「24時間テレビ43」(日本テレビ系列)。毎回、マラソン企画が番組の目玉になっているが、今夏は女子マラソン金メダリストの高橋尚子(2000年、シドニー五輪)の走りに感動したという人が多いようだ。

例年は、著名芸能人が時間調整をしながら長距離を走り、番組終了間際に日本武道館というゴール(別会場の年もあるが)に飛び込んでくる。その過剰ともいえる演出方法には批判もあった。

しかし、今年は違った。新型コロナウイルス感染防止のため、私有地でのマラソンを実施。加えて、1周(5km)走るごとにランナーが10万円を募金するという形式だった。

メインランナーとなった高橋尚子は五輪女子マラソンの優勝者だ。高橋は直前練習で右ふくらはぎを痛めるというトラブルを抱えながらも「100km以上を走る」と宣言。実際にその目標を突破し、さらに「より多くの募金がしたい」とランを続行。一時、暑さや疲労により左ふくらはぎが痙攣するなど苦しみながらも、番組終了時間まで走り続けて、最終的に116kmを走破した。

ほかにも高橋が自ら声をかけたという5人がリレー形式で挑戦。女優の土屋太鳳以外は元オリンピアンという豪華メンバーだ。

普段は走る姿を見せることがないレスリングの吉田沙保里、バドミントンの陣内貴美子、柔道の松本薫。それからアテネ五輪女子マラソンの金メダリストである野口みずき(いずれも現在は現役引退)。それぞれ異なる魅力を秘めた見ごたえのある走りだったのではないだろうか。

こちらは5人でトータル120km(土屋30km、吉田25km、陣内10km、松本15km、野口40km)を走破。高橋(240万円)と5人(230万円)を合わせて総額470万円を募金したことになる。

番組の平均世帯視聴率は関東地区で15.5%(ビデオリサーチ調べ)の歴代19位タイだったが、番組終了時の募金額は、この「募金ラン」の効果もあってか5億5200万5762円で歴代2位だった。

募金方法をキャッシュレスに切り替えたこともあるが、高橋らの走りが感動を呼び、視聴者からの募金につながったのではないだろうか。

高橋尚子はかつて女子マラソンの世界記録を打ち立てたが、現役を引退して12年が経つ。独特のフォームは変わらないとはいえ、現役時代のようなスピードはない。48歳の女性が黙々と走っている姿はテレビ的に決して華やかなものではないだろう。それでも視聴者を惹きつける魅力があった。