【佐々木】若い人が、自分の彼女を驚かせるのに近い感覚なのかもしれません(笑)。きつい合宿のとき、驚かせてやろうと思っていたのですが、選手もさるもので、ボウリング場についたら全員がチームのユニホームを着ていた、なんてこともありました。

【藤原】人を束ねるにはエンターテインメントの要素は重要です。ビジネスでもエンタメの要素を加えることは非常に効果があります。
ところで監督は、「歩歩是道場」(心がけ一つで、どんな場所も自分を高める道場になる)という言葉を大切にしていらっしゃるとか。これはお父様の教えですか?

【佐々木】親父は、何をやるにしても、うまくなりたいと思ったら、日々学ぶことがいろいろある、と言っていました。サッカーをやるにしても、いろいろな人とのつき合いや、自分の立ち居振る舞いや食事、すべてが関わってくる、というのが、親父の教えだったんです。それと同じ意味である「歩歩是道場」という禅の言葉を見つけて、大切にしているんです。

【藤原】今は、すでにロンドン五輪の予選に向けて準備していらっしゃる。

【佐々木】9月の前半には五輪予選が始まります。今回のW杯の喜びは中喜びのようなもの。まだ戦いは続いています。

※すべて雑誌掲載当時

【佐々木則夫●サッカー日本女子代表(なでしこジャパン)監督
1958年生まれ。帝京高校で日本高校選抜主将。明治大学卒業後、NTT関東サッカー部(現・大宮アルディージャ)でプレー。同チーム監督などを経て、2008年、なでしこジャパン監督に就任。10年アジア大会優勝、11年女子W杯ドイツ大会優勝。

【藤原和博●大阪府知事特別顧問
1955年生まれ。78年、東京大学経済学部卒業後、リクルート入社。東京営業統括部長などを経て、同社フェロー。2003年、東京都初の民間人校長として杉並区立和田中学校校長に就任。08年退職後、現職。東京学芸大学客員教授なども務める。

(田原英明(プレジデント誌編集部)=構成 上飯坂真=撮影 PANA=写真)